投資について学ぶ高校の野球部生徒が素朴な疑問を抱いた最近のニュース。「日銀って何するところ?」 (4ページ目)
【今後の住宅ローンへの影響】
奥野「今回、長期金利の変動幅を0.25%から0.50%に広げたことで、長期金利が0.50%まで上昇するのを日銀が容認した、ということになったんだけど、これにともなって『住宅ローンはどうなるんだ?』という声がたくさんあったみたいだね。
住宅ローンの金利を考えるうえで大事なのは、変動金利型なのか固定金利型なのか、あるいはすでに借りているのか、これから借りるのか、という2点。このまま長期金利が上昇すれば、これから固定金利型の住宅ローンを組む人は、すでに固定金利型の住宅ローンを組んでいる人よりも、金利が上がってしまう。
ただし、固定金利型の住宅ローンは、全額払い終わるまで同じ金利が適用されるから、すでに固定金利型で住宅ローンを組んでいる人であれば、これからどれだけ長期金利が上がったとしても、返済額が増えることはない。
問題は、変動金利型の住宅ローンを組んでいる人だね。変動金利型は短期金利に連動していて、かつすでに借りている人は年2回、適用金利が見直されるんだ。ただ今のところ短期金利は据え置かれたままなので、金利は上がっていない。
とはいえ、長期金利が上昇する局面で、短期金利だけをずーっと低い水準に据え置くわけにはいかなくなるので、どこかの段階で確実に短期金利も上がる。そうなったら変動金利型の住宅ローンをすでに借りている人は、返済負担が重くなってしまう。
これを防ぐ方法は、固定金利型に乗り換えるくらいかな。でも、お金を貸している銀行からすれば、少しでも多く金利を取りたいから、そう簡単に変動金利型から固定金利型への乗り換えを認めてくれないかもしれない。そこは交渉が必要だけれども、すでに変動金利型の住宅ローンを組んで家を買っている人は、これからの短期金利の動きには注意しておいたほうがいいかもしれないね」
【profile】
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。
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