MLBとNPB。選手の年俸に10倍近くの差がつく経済的根拠とは何か (4ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

自分で仮説を立てることが大切
         
「ところで今、僕がもっともらしく言った日米プロ野球の売上なんだけど、この数字が正確かと問われたら、はっきり言っておくけど、正確じゃない。ただ、経済を見るうえで、こういうセンスが必要になってくる。

 つまり、自分で仮説を立ててみるってこと。『自分が学生だった時、1クラス50人くらいで、おそらく1人か2人は野球部だったかな』とか、『自分と同じ年齢の人口が100万人くらい』とか、いくつかの数字からマーケットの規模を推測できるセンスが身につくと、ビジネスの現場でとても役に立つ。

 ちょっとした頭の体操だね。何も考えずにスマホでグーグル先生に聞いてしまう人は多いと思うんだけど、それだと物事を考える能力がいつまで経っても身につかない。

 たとえば『アメリカにはピアノの調律師が何人いるのか』というような、実際に調査することが難しい量を、『アメリカにはピアノが何台あるのか』、『それが何年に1回壊れるのか』、『どのくらい使われているのか』など、さまざまな前提を置いて概算を出すことを、『フェルミ推定』っていうのだけど、これ、コンサルタント会社の就職の面接に必ず出てくるんだ。

 間違えてもいいから、まず自分で仮説を立ててみる。それを繰り返すことで経済、つまり世の中を見る目が養われていくんだよ。

【profile】
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。

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