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高速水着騒動を乗り越えて。入江陵介が
ロンドンで見せたエースの意地 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

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 準決勝の入江の前半50mは26秒21。これは決勝進出選手中もっとも遅いタイムだった。だが、決勝は「隣の5レーンのカミーユ・ラクール(フランス)を中心に考え、前半を25秒70~80で入れば勝負できる。彼に勝てばメダル圏内に入ることができる」と道浦コーチは考えた。

 その想定どおり、入江は前半50mを25秒82の6番手で折り返す。そして後半、52秒16の五輪記録で優勝したグレイバーズに次ぐ区間タイムで泳ぎ切った。前半トップのラクールをかわし、2位のニック・トーマン(アメリカ)に0秒05まで迫る52秒97で、3位に入ったのである。

「レース前には『北京のような結果だったらどうしよう......』というのがずっと頭の中を占めていました。自分は前半が遅いのはわかっていたし、そこで焦ってしまうとラスト15mの伸びが欠けてしまう。100mは逃げの選手ばかりだけど、僕は差しのタイプなので、『絶対に追い上げて差してやる』という強い気持ちで臨みました。タイムは正直遅いのですが、五輪は順位が大事なので、3位になれたことを素直に喜びたいと思います」

 そう言って入江は喜びをあらわにしたが、少し経つと涙を流しながらこうつけ加えた。

「ここまで、けっこうギリギリでした......。4月の日本選手権が終わったあとは喘息が出て、6月には肩を痛めて左手の感覚がなくなり、ずっと違和感を抱えながら練習をする苦しい時期がつづいていました。最終合宿に入った頃からようやく状態も上がってきましたが、それまでは誰にも相談できず、ずっと孤独で、苦しみつづけていました。今だから言えることだけど、ずっと不安と戦っていました」

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