東京五輪へ明るい兆しの日本新5つ。「競泳W杯」松田丈志レポート (4ページ目)

  • 松田丈志●文・写真 text & photo by Matsuda Takeshi

 ライバル萩野公介のいない今大会、改めて彼の泳ぎをじっくり見て、4種目の泳ぎ、スタート、ターン、すべての技術の高さに驚いた。その完成度は際立っていた。最も苦手だった背泳ぎも自ら古賀淳也にアドバイスをもらい、この短水路のレースに向けて泳ぎを改良してきた。膝を大きく使わず、足を真っ直ぐにした状態で細かく蹴るようにして、そのぶん、より腕のテンポを上げて腕で引っ張る泳ぎにしていた。

 足はあくまで腕の掻きで獲得した推進力の邪魔にならないようにキックする。そして、その使わなかった分の足のエネルギーをターン後のバサロキックに使うという泳ぎ方だ。

 新たな技術に挑戦し、すぐにレースでやってのける。その向上心の高さと対応力の高さはすべての選手に見習ってほしいところだ。

 江原騎士は1500m自由形に出場し、800m通過の正式タイムで800m自由形の日本記録を更新した。リオ五輪で4×200mフリーリレーでメダルを取ったメンバーだ。彼の魅力はすぐにトップスピードに乗れる泳ぎの切れ味だが、そのスピードを後半まで持続させることが彼の課題でもある。

 今後400mや800m自由形でも世界で勝負できるようになりたいと語ってくれた。長い種目への挑戦は彼の200m自由形のレベルも上げてくれるだろう。東京五輪で再びフリーリレーでメダルを取るためにも彼には頑張ってほしい。

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 逆に課題が明確になった選手もいる。

 世界水泳200m個人メドレーで銀メダルを獲得した大橋悠依は、自身でも課題と言っていたスタート、ターンで、やはり世界チャンピオンのカティンカ・ホッスー(ハンガリー)に差を広げられていた。ホッスー選手は圧倒的なパワーでスタート、ターンで後続を離していった。

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