メダリスト松田丈志の現地ルポ。「五輪と世界水泳は何が違うのか」

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi photo by Insidefoto/AFLO

世界水泳短期集中連載・「キャプテン」松田丈志の目線(1)

 リオ五輪から1年、東京五輪まであと3年。4年ごとのオリンピックのカレンダーの中で、4分の1の時間が過ぎた。

 この1年、どんな時間を過ごしてきたのか? その答え合わせとなる競泳の世界選手権が明日から始まる。

 私が最も注目しているのが、男子400m個人メドレーだ。昨年のリオ五輪で萩野公介選手が金メダル、瀬戸大也選手が銅メダルを獲得した種目だが、今回のこの種目は、王者のプライドと挑戦者の勝利への欲求、母国開催の選手の思いがぶつかり合うレースになるからだ。

順調な仕上がりを見せる瀬戸大也順調な仕上がりを見せる瀬戸大也

 まず、「五輪と世界選手権の違い」について話しておきたい。五輪を4回、世界選手権を5回経験させてもらった人間としてストレートに言うならば、その違いは「全員が本気かどうか」だ。

 4年に一度の五輪はアスリートにとって最高の舞台で、五輪はすべての選手が「本気」でやってくる。だから五輪は特別な舞台となる。一方、不思議に聞こえるかもしれないが、世界選手権は全員が100%本気かというと、そうとは限らない。当然すべてのスイマーが努力し、真剣にトレーニングを積んではいるが、その本気度が100%なのか98%なのか90%なのか。これは結構バラつきが出るところだ。

 また、世界トップレベルの選手とコーチは、それぞれ自分たちのいわゆる「鉄板」のトレーニングプランを持っている。これをやれば、ある程度の成果は見込める、というものだ。しかし、次の五輪を見据え、この五輪後の1、2年で「新たな取り組み」をする選手やコーチも多い。次の五輪に向けより高い目標を持つ選手とコーチほど、変化の必要性を感じて常に試行錯誤しており、あえて「鉄板」のトレーニング法を封印している可能性もある。五輪をひとつの区切りにトレーニング環境を変える選手も多い。

 この「本気度」の違いと「新たな取り組み」の含みがあるのが、今回の世界選手権だ。五輪という同じゴールにみな向かっているが、スタートラインとそこへのプロセスは、人それぞれということだ。

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