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【水泳】苦悩したロンドンのヒロイン、鈴木聡美が取り戻した「本当の自分」 (3ページ目)

  • 田坂友暁●取材・文 text by Tasaka Tomoaki
  • 二宮渉●写真 photo by Ninomiya Wataru

「メダリストだから、結果を残さないといけない」
「メダリストとして恥ずかしい泳ぎができない」
「メダリストは常に記録を出して当たり前」

 素直でまじめ、周囲を気にせずどんな舞台でも自分を貫ける強い"信念"を持てる鈴木の性格が、大舞台でも力を発揮する原動力だった。ところが、その強い信念が「メダリストとしての責務」にすり替わり、自分に必要以上の重圧を与えてしまう。このプレッシャーはロンドン五輪後、3年もの間、鈴木を苦しめる結果となってしまった。

 そんな鈴木を救ったのは、やはり持ち味の"キック"だった。今年2月に行なわれたコナミオープン2016の50m平泳ぎで100分の1秒自己ベストを更新する30秒96で泳ぎ、「スピードはついていることを実感しました」と、久々にすがすがしい笑顔を見せる。100m平泳ぎでは、1分08秒12という記録ながら、「泳ぎのベースはできあがっている。あとはそれをレースの中でどうやって生かすことができるかどうか」と自信をのぞかせた。

 2013年以降、レース後はいつもどこか不安げな表情で記者たちの取材を受けていたのだが、この日ばかりはどこか光を見つけたような表情で受け答えする姿が印象的だった。一体、何が鈴木に自信を与えたのだろうか。コナミオープンのレースを終えた鈴木が、こんなことを口にしている。

「神田(忠彦)コーチと話し合って、ロンドン五輪のときのような、ヒザを開くようにして、大きく足を引きつけてしっかり蹴るキックに戻しました」

 ロンドン五輪後、高速化していく女子平泳ぎの世界についていくために選択した、新しい道への挑戦。その取り組みはなかなか結果に結びつかず、チャレンジ自体がかえって鈴木の不安を膨らます結果となり、心と泳ぎがちぐはぐになる状況を作り出してしまった。

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