2016.04.08

【水泳】苦悩したロンドンのヒロイン、鈴木聡美が取り戻した「本当の自分」

  • 田坂友暁●取材・文 text by Tasaka Tomoaki
  • 二宮渉●写真 photo by Ninomiya Wataru

一躍注目を浴びたロンドン五輪以来の力を取り戻した鈴木聡美 4月4日から東京辰巳国際水泳場で行なわれている、第92回日本選手権水泳競技大会の3日目。女子100m平泳ぎ決勝で、1分06秒72の2位に入り、自身2度目となるリオデジャネイロ五輪代表の内定を手中に収めた。

 4年前のロンドン五輪で、競泳の日本女子選手として初めて3つのメダルを手にした鈴木聡美(ミキハウス)に、彼女本来の弾けるような笑顔が帰ってきた。

「決勝は1本だけ。やり直しはきかない。もうやるしかないと決めて自分と向き合えたことが、自分の泳ぎだけに集中できたポイントだと思います」

 その強い決意は、100m平泳ぎ決勝の入場の時点で伝わってきた。名前を呼ばれると普段は笑顔を見せる鈴木だが、この日は目に力がこもっていた。プールサイドを歩くとき、観客席に軽く手を振り、また真っすぐ前だけを見つめる。

 少し硬くなっているようにも思えたが、その考えはスタート直後に吹き飛んだ。切れのあるストロークと、1発のキックで大きく進むキック力がかみ合い、25mを過ぎたあたりからスピードに乗っていく。50mは31秒08で、周りと身体半分の差をつけて折り返す。

 75mを過ぎたあたりで、疲れからか少し泳ぎに詰まったようにも見えた。ラスト5mは後半に強い渡部香生子(JSS立石)と金藤理恵(Jaked)の2人が一気に差を詰めてきたところで3人がなだれ込んでフィニッシュ。

 電光掲示板には、”1分06秒72”という記録と”2”の順位が記され、日本水泳連盟が定めたリオデジャネイロ五輪の派遣標準記録を突破。「ロンドン五輪以来かも」と、心の底からわき起こる喜びを抑えきれずに全身で表した。