心に広がる「北島ロス」の喪失感。北島康介のリオ挑戦は突然終わった

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 二宮渉●写真 photo by Ninomiya Wataru

 競泳日本選手権5日目の4月8日。この日最後のレースの男子200m決勝が終わると、会場は自然発生的に拍手の音に包まれた。2分09秒96で5位に終わった北島康介の泳ぎと、これまでの彼の戦いへの賞賛と、労(ねぎら)いの意味を込めた暖かい拍手だった。

最後のレースを終えて少しすっきりとした表情を見せた北島康介最後のレースを終えて少しすっきりとした表情を見せた北島康介「平井先生からも『課題は最後の25mだな』とずっと言われていて、自分もその思いが強かったので、昨日と今日で『どうやったらラスト25mを粘れるかな』と一生懸命想像したんです。でも粘れないんだよね、自分の気持ちは。だからそれが俺かな、みたいな。ロンドン五輪もそうだったけど、最後は自分のスタイルで決めて終わりたいなと思って......。もちろんここで終わることは想像してなかったけど、五輪を決めに行くとなったら自分らしく泳ぎ、最後は粘れるだけ粘って。2回も高地トレーニングをしているのだから、自分と平井先生を信じて泳ごうと思ってスタートしました」

 レースは昨年2分07秒77を出している小関也朱篤が150mまで2分07秒01の世界記録を上回るラップタイムで泳いだ。それに対して北島の泳ぎは、「今の康介なら前半から行けと言われれば小関と同じくらいのペースで行けるけど、最後50mはポカリと浮くと思う」と言う平井伯昌コーチの「最初の50mは速く入っても、そのあとの150mは徐々にビルドアップしていくイメージで泳ごう」という指示通り、小関に0秒43差の28秒95で50mを通過すると、その後の50mは14ストローク、15ストロークで泳ぎ2番手を維持した。しかしラスト25mを過ぎると、4レーンの渡辺一平にかわされ、最後はタッチも流れて5位に落ちた。

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