【世界水泳】メダル6個もトビウオジャパンに新戦力が台頭

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

日本勢で唯一の金メダルを獲得した瀬戸大也日本勢で唯一の金メダルを獲得した瀬戸大也 8月4日に閉幕した世界水泳選手権。日本チームの入賞数は24と多かったが、メダルは男子400m個人メドレーに出場した瀬戸大也の金メダルと、萩野公介の400m自由形と200m個人メドレーの銀メダル。そして寺川綾が女子背泳ぎ50mと100mで銅メダルを獲得し、男子メドレーリレーの銅メダルで合計6個。昨年のロンドン五輪の11個に比べると少し寂しい数字になった。

 この結果を平井伯昌ヘッドコーチは「全体としてはまずまずと言えるが、総括となると評価が分かれる大会だったと思いますね。全体的というよりは、ひとりひとりの選手に対して、どうだったかという話が大切かなと思います」と言う。

 そのひとつに昨年のロンドン五輪のメダリストは、メダル獲得種目に限り、4月に行なわれた日本選手権に出場すれば、世界水泳の代表決定というルールを採用した。「その理由は、(ロンドン五輪のメダリストはすなわち)今回の世界選手権のメダル候補ということだったんです。それがなければ引退した選手もいたかもしれないが、その点では結果は芳しくなかったとも言えます」(平井)

 結果、内定者の中でメダルを獲得したのは萩野と寺川だけだが、該当種目でメダルを獲ったのは寺川の100mのみ。萩野は2個の銀メダルを獲得したものの、ロンドンで銅メダルを獲得した400m個人メドレーでは5位に止まった。また、五輪後に本拠地を変えてから調整方法に迷いが出ているバタフライの松田丈志と、本格的な練習開始が遅れて仕上がりきらなかった平泳ぎの鈴木聡美のふたりは決勝に残れなかった。

 そして、決勝に進出した中で惜しかったのは、背泳ぎの入江陵介だ。

「五輪が終わってからずっと肩の痛みが取れなくて、泳ぎもままならない状態が続いてコーチとぶつかることも多かった。その中で若い選手たちが伸びてきて、自分自身の存在意義を考えてしまい、引き際を考えることも多かった」と入江は語った。4月の日本選手権で100mは萩野に敗れたが、200mではうまいレース運びで優勝できた。だがその後も状態が急激に良くなることはなく、この大会を迎えていたのだ。

 それでも入江は、金メダルを狙う泳ぎに徹した。『エースと呼ばれるには金メダルを獲れる選手でなければいけない』という思いが強かったからだ。その結果100mは3位に0秒08差の4位。200mは前半から優勝したライアン・ロクテ(アメリカ)と勝負するように積極的に入ったが、後半は失速して4位という惜しい結果に終わっている。だが、最後のメドレーリレーでは個人レースよりタイムを落としながらも、チームの3位入賞に貢献した。そこで笑顔を取り戻せたことは、今後にとって収穫と言えるだろう。

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