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【アジア大会】北島康介以来の"衝撃" 17歳・大橋信が平泳ぎ「世界記録」を狙う (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Toshimi Oriyama

【目指すは世界記録】

 そんな高みを目指す姿勢が、大橋が一躍注目を集めた3月の日本選手権でも現れていた。

 平泳ぎ200mで世界記録(2分05秒48)を意識して、前半の100mは世界記録ペースを0秒86上回る59秒86という驚異的な入りをした。150m通過までは、世界記録ラップを上回ったものの、「ラスト50mでは、みんなの応援する声も全部聞こえていたのですが、それを力に変えきれませんでした。その前のラスト75mぐらいから、どんどんきつくなって、最後はほぼ力が出ない感じで泳いでいました」と失速。

 結果、日本記録にも届かなかったが、大崩れすることなく自己新記録で泳ぎきった。その時の泳ぎを太田コーチは、こう振り返る。

「本人が世界記録を狙いたいと言っているので、そのためにはああいうチャレンジを1回してみるのはいいかなと思いました。もう少し前半を抑えていたら日本記録は出たと思いますが、本人の意識はそこではないという感じで......。今は勢いがあるから行きたいと思っているのだと思います」

 男子平泳ぎで日本記録を更新し、世界記録に挑む姿は、2000年代初頭の北島康介を想起させる。大橋は、「強くなりたい」「速くなりたい」という気持ちから、北島を育てた平井伯昌コーチにも、日本選手権前の高地合宿時にハイスピードでの入りを相談していたと言う。その時のことを平井コーチはこう話す。

「『前半を59秒で入ろうと思っているけど、どう思いますか?』と聞いてきたので、それは速すぎだと思ったけど、否定してはいけないと考え、『それ、さすがに速いけど、いいんじゃないか。でも最後に浮いても知らないぞ』と言いました(笑)。

 そういうマインドを持てるのも才能でしょうし、そんな速さで入ってくる"超天才"みたいな選手がいると、周りも『何をやってくるかわからないやつがいる』と警戒するし、世界から見たら脅威です。

(3月の日本選手権で)最後はへばったけど、(挑戦は)続けてほしいですね。信は練習でもしっかり泳ぎこめるタイプだから、北島みたいなスタイルにするよりは、信の特徴を生かしてやるほうがいいと思います」

 フォーム作りは基本的に自分でやっているという大橋だが、その進化の礎ともなっているのは、太田コーチが「水泳が好きでいろんな選手の映像をすごく見ているし、自分の泳ぎがどう変わっていくかも見ている」という探究心の強さだ。

 今季は、6月の日本選手権は強化途中で臨んだ大会だったこともあり、200mでは優勝したものの、50mと100mで2位に終わった。また、シニア初代表となった8月のパンパシフィック選手権では、100mで2位になり、日本記録を更新したものの、「疲労があった」とふり返った200mでは、150mまではトップに立ちながらも3位と悔しい結果に終わった。

 だが、今大会は泳ぎ慣れた東京アクアティクスセンターが舞台となる。アジア大会では、かつて2002年に北島康介が200mで世界記録を樹立し、その後、世界の頂点に立った。日本のお家芸である男子平泳ぎを受け継ぐ彼が、その再現にどこまで迫れるか、注目だ。

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