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【箱根駅伝2026】渡辺康幸が分析する「5強」崩しとシード権争い 強さを備えた帝京大に注目 創価大、城西大、東洋大は? (2ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Makino Yutaka

【シード権争いの行方は? 2区のハイレベルな争いも注目】

――3年連続出場の日本大、また、ともに4年連続出場の大東文化大と立教大の評価は?

渡辺 日大は確実に強くなってますよね。2区候補のシャドラック・キップケメイ選手(3年)を軸に、往路を任せられる箱根経験者もいます。立教は前回2区区間7位の走りで7人抜きを果たした馬場賢人選手(4年)の状態次第です。状態がよければ前回区間7位ですし、力はついていますので、流れを作れると思います。大東大は、2区や5区をいかに凌ぐか。

 前編でも触れたようにとにかく2区のレベルアップが半端ないので、1時間6分1ケタ秒で帰ってこないと遅れたことになります。1時間7分台だったら、ブレーキになってしまうわけですから。

 こう考えると、15校くらいがシード権に絡む可能性がありますね。

――天候に恵まれることが前提ですが、年々、各区間のレベルアップが著しいなか、花の2区は、2大会前でも区間14位までが1時間7分台、前回は1時間5分台3人、6分台8人でした。

渡辺 そうですね。今回も相当レベルの高い戦いになると思います。日本人では青学大の黒田朝日選手(4年)を筆頭に帝京大の楠岡選手、早稲田大の山口智規選手(4年)、中大の溜池一太選手(4年)、留学生では東京国際大のエティーリ選手や創価大のムチーニ選手、日本大のキップケメイ選手、予選会全体トップの山梨学院大のブライアン・キピエゴ選手(3年)がエントリーして実際にしのぎを削っていくと、(1時間)5分台は確実にいきますし、(1時間)4分50秒前後とか。

――4分台までいきますか! 区間記録はエティーリ選手が前回樹立した1時間05分31秒です。

渡辺 向かい風にならなければ、最低でも5分15秒くらいまでは、普通にいくのではないでしょうか。

――勝負の行方とは別に、個人的に注目しているところはありますか。

渡辺 第1中継車の解説を務める立場という前提で、私自身の勝手な青写真ですけど、國學院大の9区を吉田蔵之介選手(3年)が走ってケツメイシのお父さん(大蔵)が給水をするシーンが見られると、テレビ的に盛り上がると思います(笑)。

――吉田選手は終盤区間のイメージがあるので、勝負がかかった場面でそのシーンが見られると確かに大きな注目を集めますね。

渡辺 前田監督の信頼があってのことだと思います。あとは僕が早稲田大の監督時代に総合優勝した時、2位の東洋大との差が21秒だったのですが、現在もそれが史上最小差の優勝争いということになっています。ですので、それを上回るくらいの「大手町決戦」「日本橋決戦」を期待したいです。

 戦っている当事者からしたらたまったものではないのですが、視聴者的には盛り上がると思います。真面目な話、それを期待できるくらい、上位校の力は拮抗しています。

――そういう展開になるためには、どういう条件が必要でしょうか。

渡辺 6区が終わった時点で、優勝戦線が見えてくるんじゃないですか。

――ここ10年近くは、「やっぱり青学は強い」という展開が多かったです。

渡辺 ただ、違う学校が一番前に出ている可能性も十分にあります。早稲田が往路を制してその勢いに乗って復路はどうなる? という展開も考えられます。青学、駒大、中大あたりが追う展開になると、混戦になるのではないでしょうか。

――青学ファンには怒られるかもしれませんが、青学以外のチームが往路を獲ったほうが接戦という意味では盛り上がる。

渡辺 これまでの実績や現在の勢力図から見ると、そういうことになりますね。早稲田や中大など、OBもたくさんいる伝統校、また初の総合優勝を狙う國學院大が往路優勝するのが一番盛り上がると思います。とはいえ、青学大と駒大は、間違いなく学生駅伝を引っ張り続けるトップランナーですので、また新しい強さを見せてくれるレースも期待しています。

⚫︎プロフィール
渡辺康幸(わたなべ・やすゆき)/1973年6月8日生まれ、千葉県出身。市立船橋高-早稲田大-エスビー食品。大学時代は箱根駅伝をはじめ学生三大駅伝、トラックのトップレベルのランナーとして活躍。大学4年時の1995年イェーテボリ世界選手権1万m出場、福岡ユニバーシアードでは10000mで優勝を果たし、実業団1年目の96年にはアトランタ五輪10000m代表に選ばれた。現役引退後、2004年に早大駅伝監督に就任すると、大迫傑が入学した10年度には史上3校目となる大学駅伝三冠を達成。15年4月からは住友電工陸上競技部監督を務める。学生駅伝のテレビ解説、箱根駅伝の中継車解説でもおなじみで、幅広い人脈を生かした情報力、わかりやすく的確な表現力に定評がある。

著者プロフィール

  • 牧野 豊

    牧野 豊 (まきの・ゆたか)

    1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。229月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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