【箱根駅伝2026】國學院大のカギを握るゲームチェンジャー・野中恒亨 「3年目は箱根で区間賞を取りにいきます」の決意を裏づける確固たる自信 (2ページ目)
【同級生・辻原との "必勝リレー"は箱根でも?】
威勢のいい言葉は、勢い任せで発しているわけではない。中長期的な視点で綿密にキャリアプランを立ててきた。大学1年目は下積み期間。3大駅伝には出走できなくても焦りはなかった。頭角を現したのは2年目から。前年度は出雲駅伝、全日本大学で連続区間賞を獲得し、箱根駅伝では1区で区間6位。そして、迎えた3年目で本格的にブレイクする。
高校生の頃から1年ごとに目標値を定め、クリアしてきた。5000mの目標タイムを設定し、1年生の時は14分台、2年生になると14分20秒、3年生では13分台が見えるところ。大学でも同じ。1年目は箱根メンバーに絡む、2年目で箱根出走。一歩ずつ前に進んでいる男は、はっきり言う。
「3年目は箱根で区間賞を取りにいきます」
力強い言葉は練習に裏づけされた自信である。1年かけて課題のスタミナを強化。意識的に走行距離を伸ばし、夏の期間は前年より月間100km以上も増やした。量だけではない。4月から重点的にインナーマッスルを鍛えることで、継続して強度の高い練習も重ねられるようになっている。2年時に比べると、"余裕度"が違うという。それでも、過信はしていない。箱根路のコースを頭に入れたうえで、自らの適性区間を口にする。
「持ち味が生きるのは1区、3区、7区」
難所の起伏がポイントになる2区での起用については苦笑いを浮かべていた。
「可能性はゼロではないですが、上り坂に弱くて......」
往路で得意のスピードが、より生きるのは下り基調の3区。前半から積極的に仕掛け、前の選手を次から次に捕まえていく展開は想像できる。今シーズンの駅伝でも見てきた光景である。チームの戦略が、うまくはまったのは出雲路。3区の野中から辻原の襷リレーで優勝を手繰り寄せている。箱根駅伝に向けた記者会見で、出雲同様の4区を志願する同期が「箱根の区間賞をまだ取ったことがないので取りたい」と意気込むと、いたずらっぽい笑みを浮かべ、宣言していた。
「辻原よりも先に箱根の区間賞を取りたいと思います」
3区の野中が流れを引き寄せ、4区の辻原で逃げる――。箱根路でも"必勝リレー"が再現されれば、グッと初の総合優勝に近づくはずだ。勝負のポイントを見極める前田監督は、ふたりのやり取りを静かに見守っていた。
著者プロフィール
杉園昌之 (すぎぞの・まさゆき)
1977年生まれ。スポーツ総合出版社の編集兼記者、通信社の記者として働いた後、フリーランスのスポーツライター兼編集者へ。現在はサッカー、ボクシング、陸上競技、野球、五輪競技全般とジャンルを問わずに取材している。
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