【箱根駅伝 名ランナー列伝】今井正人(順天堂大学):「山の神」の称号を初めて知らしめた衝撃のゴボウ抜き (3ページ目)
【マラソンでも日本代表に】
「5区で注目を浴びる活躍ができたのはすごくうれしいですし、名前を覚えてもらえたこともありがたいと思います。箱根駅伝のイメージを覆すほど、マラソンで結果を出したいなというモチベーションになりました」
今井は社会人2年目からマラソンに挑戦すると、10度目のレースとなる2015年の東京マラソンで当時・日本歴代6位の2時間07分39秒をマーク。日本人トップに輝いて、北京世界選手権の男子マラソン代表に選ばれた(※髄膜炎のため欠場)。その後もマラソンに挑み続けて、2023年10月のMGC(パリ五輪マラソン日本代表選考会)には最年長(39歳)で出場した。
第93回大会(2017年)に小田原中継所が元の場所に戻り、5区の最長時代は終わった。5区のコースは一部変更されたとはいえ、当時と現在の距離は20mほどしか変わらない。第101回大会(2025年)で青学大・若林宏樹が区間記録(1時間10分04秒)を大幅短縮する1時間09分11秒をマークするまで、今井が2年時に叩き出した1時間09分12秒が5区の"最速タイム"だった。
当時は厚底シューズがなかったことを考えると、今井の走りは別格だったと言えるだろう。さらに「山の神」と称賛されながら、自分の道を貫き、マラソンでも結果を残したところに今井正人の"本当の強さ"があったように思う。
Profile
いまい・まさと/1984年4月2日生まれ、福島県出身。原町高(福島)―順天堂大―トヨタ自動車九州。箱根駅伝5区では大久保初男(大東大/1974〜77年に4年連続区間賞)以来となる、3年連続区間賞を獲得した選手で、大会MVPに当たる金栗四三杯を2年時から3年連続で受賞した。卒業後はトヨタ自動車九州で競技を継続し、マラソンでは2015年北京世界選手権代表に選出。現役引退後の2024年4月から順大長距離ブロックコーチに就任した。
【箱根駅伝成績】
2004年(1年)2区10位・1時間10分10秒
2005年(2年)5区1位・1時間09分12秒*区間新
2006年(3年)5区1位・1時間18分30秒*区間新
2007年(4年)5区1位・1時間18分05秒*区間新
*区間新記録は当時
著者プロフィール
酒井政人 (さかい・まさと)
1977年生まれ、愛知県出身。東農大1年時に出雲駅伝5区、箱根駅伝10区出場。大学卒業後からフリーランスのスポーツライターとして活動。現在は様々なメディアに執筆している。著書に『箱根駅伝は誰のものか』『ナイキシューズ革命 〝厚底〟が世界にか
けた魔法』など。
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