村竹ラシッドの新たな目標と野望 海外で「勝つ試合を増やして」ロス五輪までノンストップ (2ページ目)
【12秒台の感覚の再現性が課題】
――それがうまく8月のアスリートナイトゲームズイン福井で出した12秒92の日本記録に繋がったと思いますが、走っていて12秒台の感覚は違いましたか?
村竹 13秒0台や1台を走る感覚とはまるで違いました。その感覚はちゃんと文章に起こしてメモとして保存しているし、感覚としても体のなかに残っています。そこをもっとうまく咀嚼して、どう再現性を高めていくのかも、この冬の練習の課題になってくるかなと思います。そう考えると今年も大変な冬期になりそうです(笑)。
――「12秒台を出すこともメダル獲得のひとつの条件」と話していましたが、それを福井で出せたことで、村竹選手自身も世界陸上のメダル獲得がリアルになったのではないですか?
村竹 実際に世界陸上も12秒台を出せばメダルが獲れていました。ただ、だからといって国立競技場で12秒台を出せるかといったら話は別。福井と国立ではタータンの質(トラックの素材)やハードルの材質、風などのコンディションなど、何もかも違うというのは自分もコーチもすごく分かっていたので、(周りの声に)惑わされることはなかったですね。
実際に記録のアベレージをもっと高めていく必要があると考えていたし、去年はアベレージが大体13秒2台で、上振れした時に13秒0が出る感じでした。今年はそのアベレージが0秒1上がり、上振れした時は12秒台が出る感じになりました。だからどんな条件でも13秒05から13秒00くらいを出せるようにしていけば、12秒台の再現性がもっと高まってくるかなと思いますし、もっと(メダルへの)鮮明なビジョンが見えてくると思っています。
――来年は五輪も世界陸上もない年ですが、どういう目標を持ってすごそうと思っていますか?
村竹 新設の世界陸上アルティメット選手権(9月11日~13日/ブダペスト)があって、そこでの上位入賞を目指して頑張りたいと思っています。それに今回の結果でダイヤモンドリーグもいろいろ回れると思うので、転戦して経験を積んで記録のアベレージを上げて、国内のベスト記録と海外のベスト記録の差をなくしていくのが大事になってくると思います。
あとはダイヤモンドリーグも2位が最高なので、1回は勝ちたいなと思いますね。どこかでタイトルは取りたいなと思うし、ダイヤモンドリーグファイナルも含めて勝てる試合をどんどん増やしていきたいです。
――2028年のロサンゼルス五輪までは走り続けることになりそうですね。
村竹 そうですね。ロサンゼルス五輪までは頑張りたいと思います。でも、今は試合もないのでしっかり休養を取って冬に備えるつもりです(笑)。今季の試合のなかでも多くの課題が見つかったので、それをこれからのオフシーズンに長い時間をかけてまとめないといけない......。やっぱり競技から一旦離れるからこそ見えてくるものもあると思うので、休みの期間をうまく使ってじっくり考えていきたいと思っています。
Profile
村竹ラシッド(むらたけ・ラシッド)
2002年2月6日生まれ。千葉県出身。松戸国際高校3年時に110mハードルでインターハイを制す。順天堂大進学後は着実に実力を伸ばし、2022年、大学3年時に世界陸上オレゴン大会に出場。JAL所属となった2024年は、パリ五輪に出場すると5位入賞を果たした。今年の8月にはアスリートナイトゲームズイン福井にて、日本人選手として初の12秒台となる12秒92の日本記録を出した。
著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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