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【東京世界陸上】男子800m落合晃19歳の決意「日本記録は絶対に更新して少しでも爪跡を残せるように」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

環境の変化にも対応しながら成長を続けている photo by Murakami Shogo環境の変化にも対応しながら成長を続けている photo by Murakami Shogoこの記事に関連する写真を見る

【世界を見据えて突き進む】

――大学に入って、もう一度体を作り直しているという感じだと思いますが、高校生で日本記録を出した重荷はありませんか?

落合 世界で見ると1分44秒8では戦えないと思うし、「日本ではなくて世界を見て、もっと頑張らないと」というのはすごく思います。大八木総監督にも「世界で勝負しなければダメだ」と言われているので、重荷にはなっていません。だから、日本選手権も「最低限日本記録更新はしたい」と思っていたので、勝っても悔しさのほうが強かったです。

――これからの世界との戦いを考えると、最大の目標にするのはどこになりますか。

落合 やっぱり(2028年の)ロス五輪が一番大きな目標かなと思います。その先はまだわからないのでまずは学生のうちに五輪に出場をして、そこで勝負したいという思いが一番強いです。

――パリは経験をしてみたい五輪でしたが、今年の世界陸上はどう考えていますか?

落合 日本記録は絶対に更新して少しでも爪跡を残せるように頑張りたいと思っています。あわよくば準決勝に駒を進められたらいいなと。東京開催なのは環境としても大きなチャンス。アジア選手権の時とは違ってしっかりコンディションも整えて一番いい状態で臨めると思うので、そこで結果を出したいなと思います。

――そのために、課題にしているのは何ですか?

落合 ラストで競り勝たなければいけないということは常に言われているし、ラスト200mを25~6秒で上がらないとダメだと思っています。600mを1分17秒で通過してラストを26秒で上がれば43秒台が見えてくるので、そのラップをイメージして練習に取り組んでいます。そのプランを実現して世界の選手と競り合い、そこで何かをつかめたらなと思います。

――そのあとの課題というのも見えていますか?

落合 今すぐではないですが、総監督には「長い距離の練習も必要だぞ」とは言われています。海外の選手は10マイル走などをやると聞いているので、自分も10マイルくらいまでは走れるようになりたいと思います。それも考えて駒澤大にしたというもの少しはありますけど、駅伝に関しては今のところ「ちょっとすみません」という感じですね(笑)。

※    ※ ※
 中学・高校時代はほぼひとりで練習をしていたという落合。今は1500mを目標にしている3年の工藤信太朗が仲間となって、精神的な余裕も生まれ、楽しく練習ができていると笑顔を見せる。

 上京する時に思っていた「都会を散策してみたい」という思いは、大会の時に通った新宿駅の人の多さに圧倒されて実現していない。「滋賀と比べると今は寮の周りだけでもいろいろあるので、それで十分です」という彼は、陸上だけに集中する学生生活を送っている。

 19歳の落合が東京世界陸上で日本陸上界の新しい扉を開くのか、男子800mの予選は9月16日に行なわれる。

Profile
落合晃(おちあい こう)
2006年8月17日生まれ。滋賀県出身。滋賀学園3年時のインターハイ800mで、1分44秒80を出して日本記録を更新。久しく注目を集める選手が出てこなかった800mでの日本記録更新に注目が集まった。今年4月に駒澤大学に進学し、大八木弘明総監督のもと、世界のトップを目指している。

著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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