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東京2025世界陸上、男子100m代表争いで急浮上の守祐陽 大東大コーチが語る「高速ピッチの強み+体の成長=結果」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【体の成長が能力に追いつき結果に反映】

 守は自身の成長の要因を、大学に入ってから始めたウエイトトレーニングの効果を口にする。体重は7~8kg増加し、さらに「去年だと3カ月に1回ぐらいはどこかが痛いとかケガがあったけど、そこを乗り越えて練習量も少し調整してきました。そのなかでショートスプリントに向けた練習を増やして、去年ほどシーズン中には長い距離もバンバン走らなくなったので、うまく練習の組み立てができていると思う」とも話す。

 また、佐藤コーチは守の飛躍について、同級生のライバルの存在もその一因に挙げる。

「同学年に栁田くんや、今年5月の世界リレーで活躍した井上直紀くん(早大)がいるのは大きいし、絶対に刺激を受けていると思います。ただ、彼らふたりは中学から活躍していて高校でも強かったのは、早い段階から体がしっかりしていたからだと思います。成長曲線はだぶん彼らより2〜3年ぐらい遅れているんだろうという印象で、今になってやっと、成長が追いついてきたのだと思います」

 体がやっと追いつき始めたという昨年は、100mで安定した結果を残した。4月の織田記念を10秒26で優勝し、関東インカレも1部で早大の井上を抑えて優勝。6月の日本学生個人選手権では予選で10秒13の自己新を出し、決勝は10秒19で栁田に次ぐ2位になった。佐藤コーチはこう続ける。

「去年の関東インカレは10秒37での優勝でしたけど10秒2台も出るようになり、『もうどこでも10秒15ぐらいで走れるんだけどな』と思っていたし、追い風参考に近い環境なら10秒05くらいでも走れるなと感じていました。でもまだ体がしっかりしていなかったので、よい記録を出したあとはその反動で次がダメになってしまっていた。もう普通ではあり得ない、大会のラウンド間でもヘタるくらいでしたから。

 でも今年は体の基礎の底上げがボンとできて、体つきも変わり、環境のいいとこだったら『10秒05で走れる』というのが、『9秒台に入れる』というところまで上がった感じです」

 守本人も「僕は大きな目標を立てるのではなく、現実的な目標をしっかり積み上げていくタイプなので世界陸上のこともあまり考えていなかった」と言うように、日本選手権の目標も「決勝に進出して5位くらいになればいい」と考える程度だった。佐藤コーチが「卒業してから伸びていってくれればいい。決勝進出は実業団に入れる条件のひとつでもある」と考えていたからだ。

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