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【大学駅伝】駒澤大・藤田監督「課題は3年生以下」 関東インカレを終えた新チームは「このままじゃいけない」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【帰山がすばらしい走りを見せてハーフ優勝】

 4位でゴールした山川は、脇腹を押さえていた。その後、待機所に戻って休むのかと思ったが、「いくぞ」と周囲に声をかけ、60分間走をやるために飛び出していった。ハーフのレースを走り終えたばかりなのに大丈夫かと筆者は驚いたが、戻ってきたあと、具合が悪化し、病院に向かった。

「ハーフで勝てなくて悔しい気持ちはわかるんですが、それでどんどん自分を追い込んで、制御できなくなってしまう。とにかくやりすぎてしまうんですよ。私が休めといっても聞かないんです。そういう気の強さがあるから、昨年の全日本のような走りができるんですけど。でも、それは諸刃の剣で、いい時はいいですけど、ダメな時はとことんダメになってしまう。このままでは潰れてしまうので、山川はちょっと休ませます」(藤田監督)

 山川の「自分がやらないと」という気持ちは、痛いほど伝わってくる。だが、藤田監督が言うように休養も競技者にとっては練習と同じぐらい重要だ。疲労を抜いて、リフレッシュしてレースの舞台に戻ってきてほしい。

 一方、その山川と同じ4年の帰山はハーフですばらしい走りを見せた。関東インカレの2週間ほど前に行なわれた日本学生個人選手権10000mではコンディションがよくなく、10位に終わった。その後も調子が上がらす、最後の調整も体が重かったという。

「正直、レースの前の週の練習もタレてしまって、監督からも『精一杯やっていこう』と、なんか慰めてもらうぐらいの感じでした。たぶん、誰も期待していなかったと思うんですけど、心のなかでは絶対にやってやろうと思っていました。そうしたら意外と走れて(笑)。高山君がラスト1周で仕掛けてきて、ふたりきりになったところで、自分はまだ余裕がありました。予定より少し早めに仕掛けた形になったんですけど、うまくいってよかったです」(帰山)

 チームメイトで同学年の伊藤蒼唯が学生個人選手権の10000mで優勝したことについては、うれしさ半分、悔しさ半分だった。

「仲間とはいえ、やっぱりライバルなので、いい記録を出されると悔しいですし、自分も負けていられないと思います。山川に対しても同じです。ただ、山川はキャプテンになってすごくやる気を出して、いろいろ考えてやってくれているので、チームという部分では山川を自分らが支えていきたいと思います」(帰山)

 帰山の走りには、藤田監督も満足そうな笑みを見せてこう語った。

「学生個人選手権から準備期間が足りないなか、今回、優勝ですからね。あのスパートも一瞬で相手を突き放したので、力がついてきたと思います。帰山を含め、伊藤、(佐藤)圭汰、山川と4年生は強いですし、メンツが揃っていますが、(チーム全体として見ると)今のところ彼らだけですからね。課題はその下の学年です」

 昨年、鈴木芽吹(現・トヨタ自動車)ら強い選手が抜けたあと、選手層が薄くなり、苦戦必至と言われた駒大が3大駅伝すべて2位になるなど、ある程度戦うことができたのは、1年生と2年生が駅伝シーズンにグッと力を上げてきたからだ。

 実際、箱根駅伝では、往路で谷中晴(当時1年)が3区6位、桑田が4区4位、復路では安原が8区4位、村上響(当時2年)が9区5位、小山翔也(当時2年)が10区2位と、1、2年生が好走し、6区2位の伊藤や7区1位の佐藤の活躍もあり、復路優勝を果たした。だが、今季、彼らの走りからは、昨年ほどの勢いは感じられない。

「やっぱり2、3年生が出てこないといけません。(青山学院大の)安島(莉玖)君(2年)が(関東インカレの男子2部10000mで)日本人トップを取りましたが、あの気迫ですよね。これを外したらもう使ってもらえないという危機感が青学大の厳しい競争の表れです。それが、ウチにはまだない。特に3年生は、箱根を1回走って満足しているわけじゃないと思うんですけど、のんびりした雰囲気を見ていると、緊張感や危機感を持っているのかなと思いますね」(藤田監督)

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