「世界から一番遠い種目」で見えてきた頂点 東京2025世界陸上での村竹ラシッドの目標は「12秒台、銀メダル以上」 (3ページ目)
【急速にレベルアップした日本のハードル】
――現時点で、12秒台への手応えはどうですか。
「いまはオフで体を動かしていないので、何とも言えないですが......。でも、冬季練習でしっかり課題を克服できるかどうかだと思うので、まずはそこに向けてしっかりトレーニングしていければと思っています」
――かつて「世界から一番遠い種目」と言われていた日本のハードルですが、近年、村竹選手だけでなく、村竹選手の大学時代の先輩にあたる泉谷駿介選手(住友電工、自己ベスト13秒04)などの活躍で、急速にレベルが上がっているように思います。その要因についてはどう考えていますか?
「僕はそのインフレに乗っかっているだけなので、よくわからないです(苦笑)。ただ、僕や泉谷選手の前にも、矢澤航さん、高山峻野選手(ゼンリン、自己ベスト13秒10)、金井大旺さんらがいて、僕は学生時代から皆さんの動きをよく見ていましたし、そういうのが下の世代にも波及して記録更新につながっているのでは。未知の世界に挑んでいるわけですし、記録を更新してきた先輩たちには尊敬の気持ちしかありません」
――最後に今後ハードル選手として目指す道や目標があれば教えてください。
「今後の展望みたいなものは、正直、あまり考えていません。まずは、東京の世界陸上でしっかりメダルを獲っていい結果を残したいというのが今の一番の目標です。そのあとのことは、世界陸上が終わってから考えればいいかなと。もちろん次のロス五輪のこともありますが、それも東京の世界陸上でどんな結果になるかで、向かい方も変わりますからね。もし世界陸上で優勝できれば、優勝した立場として順位を落とさずどう振る舞っていくかということになるし、挑戦者という立場なら、どう挑戦していくのかとか、やっぱり心持ちは違ってくると思うんです。だから、まずは東京の世界陸上を頑張りたいと思っています」
【profile】
村竹ラシッド
2002年2月6日、千葉県生まれ。JAL所属。男子110メートルハードル日本記録(13秒04)保持者。小学5年生で、担任から陸上競技を勧められたことがきっかけで陸上競技を始める。順天堂大学在学中の2022年、世界陸上競技選手権大会オレゴンに出場。パリ五輪では5位入賞を果たす。
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著者プロフィール
栗原正夫 (くりはら・まさお)
1974年6月11日生まれ、埼玉県出身。大学卒業後、放送、ITメディアでスポーツにかかわり、2006年からフリーランスに。サッカーを中心に国内外のスポーツを取材し、週刊誌やスポーツ誌に寄稿。ワールドカップは1998年、夏季五輪は2004年からすべて現地観戦、取材。メジャーよりマイノリティ、メインストリームよりアンダーグラウンド、表より裏が好み。サッカー・ユーロ、ラグビーワールドカップ、テニス4大大会、NBAファイナル、世界陸上などの取材も多数。
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