出雲駅伝で存在感を見せた創価大学 ムチーニが直前で離脱も吉田響や1年生が好走 (4ページ目)
山口は、トップから4位に落ちながらもその順位にとどまった。
力がないとここからズルズルと順位を落としてしまいがちだが、いまの創価はこの順位を維持できる力がある。4区の主将の吉田凌(4年)は、青学、駒澤大、國學院大の3チームに離されながらも45秒差で5区の黒木陽向(3年)に繋ぎ、黒木も駅伝デビューながら4位を死守した走りでアンカーの小暮栄輝(4年)に襷を渡した。榎木監督は、「全日本や箱根のことを考えると、黒木と小暮はここで駅伝を経験してもらい、どんな走りをするのかを見ておきたい」と語り、ふたりに期待していた。黒木、小暮ともに区間6位でまずまずのデビューを飾り、4位を守った。
最終的に優勝した國學院大に2分23秒差をつけられ、3位内という目標は達成できなかったが、創価大にとっては価値のある4位だった。
ムチーニを入れて3以内が目標だったが、留学生抜きの日本人だけでレースを作り、戦えたことは非常に大きい。選手は駅伝で十分に戦えるという自信を得ただろうし、それが走る際の支えにもなる。吉田響は「今回の出雲はみんなポジティブに捉えてもいいと思います。これがベースになるので、次の全日本や箱根ではもっと上の順位を狙えるようになると思います」と語ったが、上を目指す意欲がチーム全体に浸透していけば競技に対する姿勢が変わり、より競技力が向上していくだろう。
また、山口、黒木、小暮が駅伝デビューを果たし、今後に向けて新戦力が計算できるようになったことも大きな収穫だ。山口はトップを譲ったが、粘り強く走り、夏合宿での頑張りで評価を上げた黒木も順位を守る走りができた。安定した走りが持ち時の小暮も自分のよさを発揮した。この6名に加え、ムチーニや昨年出雲2区を駆けた小池莉希(2年)、川上翔太(2年)らがいる。
榎木監督は、手応えを感じているようだ。
「今回は國學院さんが優勝しましたが、私は一番強いと思っていましたし、勝つべくして勝ったなという印象です。創価が優勝するには、まだ足りないものが多いですが、安定して結果を残していくことが大事です。そうして何回か優勝争いをしていくなかで、優勝のチャンスが出てくるのかなと思いますが、次の全日本も楽しみです」
今季の創価大はもはやダークホースにあらず。ここ数年の駅伝の結果と今回の出雲の戦いで、「やっかいな大学だ」と、あらためて他校にマークされていく存在になるだろう。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。
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