出雲駅伝で存在感を見せた創価大学 ムチーニが直前で離脱も吉田響や1年生が好走 (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 スピードに乗った吉田響の走りには、気持ちの強さも滲み出ていた。

「2区を希望した時から佐藤圭汰(駒澤大・3年)くんの記録を抜くことを目標にしていましたし、走る時にはどんな順位であれ、絶対に1位までもっていくのを自分の仕事だと思っていました。今回は最初の時点でかなり抜くことができたのでよかったですが、区間新が出なかったことがすごく悔しいです」

 9人抜きのド派手な活躍で、吉田はレースをリセットした。26秒のビハインドを逆に2位の青学大に20秒差をつけて、山口に襷を渡した。「山口にトップで襷を渡す」とレース前に約束したとおりの有言実行だった。

 ムチーニの代わりに3区に入った山口は、榎木監督が期待するルーキーだ。

 9月28日の絆記録挑戦会5000mで13分56秒72と自己ベストを更新すると10月8日の奥球磨駅伝競走大会では上り基調の3区を駆け、後続に33秒差をつけて区間賞を獲得した。出雲駅伝は9月末から連戦になるが、榎木監督曰く「山口は連戦がきくタイプ」で、ロードで戦えるのでムチーニの代役として適任だった。

「いきなりの変更で走らせていただくことになったのですが、3区は強い選手がいるのでプレッシャーは感じていました」

 駅伝でトップを走れる経験はそう簡単にできるものではないが、山口はとくに舞い上がることもなく、冷静にスタートを切った。うしろからは黒田朝日(青学大・3年)や山川拓馬(駒澤大・3年)ら強い選手が来るのがわかっていたので、追いつかれることは走る前から想定していた。

「そう思っていたんですけど、いざ捉えられると、負けたくない気持ちが出てきて。でも、ついていくのが精一杯で何もできなかったです。力の差を痛感させられましたし、自分の弱さを実感させられました。それに自分のところで順位を落としてしまったことが決定打になってしまい、目標に届かなくなってしまった。それが本当に悔しいですし、先輩方に申し訳ないという気持ちでいっぱいです。今回走らせていただいた経験を次の全日本、箱根に繋げて行ければと思います」

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