【駅伝シーズン開幕】出雲駅伝プレビュー 箱根王者の青学か、3連覇を狙う駒澤か、追う國學院、城西、創価の戦力は (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【箱根王者の青学大】

 青学大は番付でいえば横綱クラスの強さだ。

 今シーズン絶好調の鶴川正也(4年)が1区に入り、野村昭夢(4年)が2区、昨年、出雲2区区間賞の黒田朝日(3年)が3区に配置され、前半に勝負をつけるべく強力な布陣を敷いている。アンカーには「駅伝男」の太田蒼生(4年)が置かれ、1区、3区、6区の主要区間をエースが占めている。

 ただ、青学大は4区も5区も強い。4区には先月28日に開催された絆記録挑戦会5000mで13分37秒77の自己ベストを出した宇田川瞬矢(3年)が配置され、スピードで一気突き放す、あるいは追いつく区間になりそうだ。5区に置かれた若林宏樹(4年)は、実力的には他大学の5区のメンバーと比べてもトップだ。つまり、オーダーにまったく穴がない。

 青学大は、先手必勝で1区から鶴川、野村、黒田ら強い選手をどんどんつぎ込んで主導権を握り、4区、5区をうまく繋いで6区の太田に繋いで「ぶっちぎりの優勝」というイメージでいるのではないだろうか。ミスがなく、隙の無い駅伝ができれば番付通りに青学大が優勝街道を突っ走るだろう。
 
 優勝候補の最右翼である青学大にも劣らない戦力を保持し、初優勝を狙っているのが、創価大だ。昨年は2位になりながら3区の選手のドーピングで失格になった。その時のメンバー6名のうち4名が今年もエントリーメンバーに名を連ねている。

 目を引くのはダブル吉田(凌、響)だが、優勝に欠かせないキーマンは、3区のスティーブン・ムチーニ(2年)だ。9月の蒸し暑さが残る中、日本学生対校選手権5000mで13分52秒25のタイムで優勝、好調を維持しており、ロードでも強さを発揮するだろう。1区の石丸惇那(3年)も9月末の日体大長距離競技会記録会5000mで13分42秒30の自己ベストをマークし、いい流れで出雲を迎えられそうだ。「1区から出遅れることができないので、攻めの走りをします」と榎木和貴監督が語るように、昨年1区を駆けた石丸から2区の吉田響につなぎ、3区のムチーニ、4区の吉田凌(4年)までは他大学に負けないオーダーを敷いている。5区の黒木陽向(3年)、6区の小暮栄輝(4年)は、駅伝デビューになるが、プレッシャーがかかる最後の2区間で、彼らがどんな走りを見せてくれるのか。これまで先行逃げ切りのスタイルの駅伝で好成績を収めてきたが、今回も創価スタイルで初優勝を目指すことになる。

 今回の出雲も1区、3区、6区という主要区間に実力派が集まった。

 どの大学も昨年の篠原の走りで逃げ切った駒澤大の戦いを見ており、なんとしても1区から先行すべく、ガチガチのバトルが見られることになりそうだ。その1区には鶴川(青学大)、斎藤(城西大)、桑田(駒澤大)、山口智規(早大)、青木(國學院大)、石丸(創価大)が立つが、誰が先手を取り、3区までの流れを作るのか。学生駅伝3冠の内、最初の1冠となる出雲を、どこが制するのか。今年は、少し静かな駅伝シーズンの入りだが、「熱狂」の導火線に着火するようなタギったレースを期待したい。

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

【画像】西村菜那子「駅伝に詳しすぎるアイドル」フォトギャラリー

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る