大学駅伝シーズンに向け強さを見せた中央大エース・溜池一太「学生記録を破るだけでは満足できない」 (4ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 溜池が競技者として貪欲な姿勢を見せるのは、今年のアメリカでの経験がベースになっている。ボストンの室内競技会ではグラント・フィッシャー(アメリカ)が5000m12分51秒84をマークした瞬間を見学し、3月のThe TENではフィッシャーが10000mで26分52秒04を叩き出し、大きな衝撃を受けた。
 
「あれを見て視野が広がりましたし、27分台でも満足できないし、学生記録を破るだけでは満足できなくなりました。自分がこれから五輪や世界陸上に出るような選手になったら、そこでの経験がターニングポイントだと思っているので、自分の意識を変えてくれたアメリカの人たちに感謝しています」

 アメリカでの経験を経て、溜池は今シーズン、自己ベストを更新し続けている。

「アメリカで練習してきたことが形になってきたのかなと。本当は爆発したいんですけど、自分は確実にちょっとずつという感じなので(笑)。今は駿恭(吉居・3年)とダブルエースと呼ばれていますが、自分がエースと言われたいですし、誰にも負けたくないですね」

 ビッグマウスではなく、淡々と冷静に決意を述べる様は、妙な迫力がある。静かなるエースは、秋の駅伝で爆発的な走りを見せてくれそうだ。

 ホクレンディスタンスでトラックシーズンは終わった。

 藤原正和監督は、「トラックはまずまずですけど、仙台ハーフでは結果が出ず、そこがうちの弱さかなと。夏にもう一度、しっかり距離などを踏んで秋の駅伝に備えたいと思います」と語った。

 溜池はエースらしい走りを見せており、柴田、本間、岡田が成長。全体のレベルが上がり、選手層はかなり分厚くなってきた。昨年の箱根は直前に体調不良者が続出し、シード権を失ったが、優勝候補たる戦力を保持していた。今シーズンも昨年に負けない選手層が育まれており、秋の駅伝シーズン、中央大は本来の存在感を発揮しそうだ。

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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