箱根駅伝で城西大が3位飛躍の要因 世界で通用する選手も育てた最先端トレーニングとは (2ページ目)

  • 酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato

【本格的な「低酸素トレーニング」】

 イケイケだった村山が将来的に行き詰まった場合について、櫛部監督が「ひとつ、私に案があるんです。内緒ですけど(笑)」と言っていたのが印象に残っている。その案というのが、「低酸素トレーニング」だったのではないかと思っている。

 当時と比べて、城西大のトレーニングは大きく進化した。櫛部監督は本格的な「低酸素トレーニング」を取り入れるようになったのだ。

 直近10年間で箱根駅伝への出場は7度だが、城西大は世界大会に羽ばたいた選手を何人も輩出している。

 村山は2015年に、10000mで27分29秒69の日本記録(当時)を樹立。リオ五輪(5000m、10000m)にも出場した。実業団時代に母校で低酸素トレーニングを積んだ山口浩勢(現・加藤学園高陸上部副顧問)は、3000m障害で東京五輪とブダペスト世界選手権に出場している。

 2021年には、当時4年生だった砂岡拓磨(現・コニカミノルタ)が、5000mで日本人学生歴代2位の13分19秒96をマーク。さらに"山の妖精"山本唯翔は、前回の箱根5区で区間賞に輝いたあと、ワールドユニバーシティゲームズの10000mで銅メダルを獲得するなど、学生のうちに世界で結果を残す選手も出てきた。

 近年はボックス型の「低酸素室」を寮内に設置しているチームが増えており、低酸素トレーニング自体は珍しいものではない。ルーム内にトレッドミルやエアロバイクが置いてあり、ケガをしている時でも心肺の負荷を落とすことなく、追い込むようなトレーニングができる。しかし、たいていの場合は数人しか入ることができない。
 
 一方、城西大はトレッドミルを10台以上置けるほどの広さを持つ「低酸素室」を大学内に完備。夏の暑い時期にも快適な空間で、高強度のトレーニングができるという。山口、砂岡らの活躍もあり、徐々に低酸素室を使用する選手たちが増加している。山本は多い時で週3回も利用し、箱根駅伝の前は低酸素環境で睡眠をとったという。

 おそらく、城西大が最も「低酸素」を活用している学生チームだろう。

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