箱根駅伝3区で駒澤大・佐藤圭汰にあった不安要素 青学大・太田蒼生が見せたそれにつけ入る走り (3ページ目)
【青学大vs.駒大を象徴した3区】
佐藤は5km通過が14分00秒と決して悪いわけではなかった。だが、経験のない20km超の距離を意識したのか、見ている側からすれば少し抑えたような入りをした。
対して青学大の太田は最初の5kmを13分台で突っ込み、7.6km地点で佐藤に追いつく気迫のこもった走りをした。10km通過も佐藤は27分50秒だったのに対し、太田は27分28秒。太田はトラック1万mの自己ベストより50秒以上速いペースで走っていたのである。しかも、疲労の気配すら見せなかった。
太田は佐藤の後ろにつき、レースを進める。出雲、全日本の2区で佐藤が早々に2位以下に優勝争いをあきらめさせる快走を見せた時は、トップでタスキをもらいその後も単独走だった。つまり今季の駅伝では競る経験がなく、それが数少ない不安要素でもあった。その不安が太田につかれたことで現実のものとなってしまう。
「自分のリズムで走れないのが苦痛だった」という佐藤を太田は18.2kmから突き放しにかかり、3区では日本人初の1時間の壁を突破する59分47秒で走破。太田は、これまでの日本人最高記録(2022年に東京国際大の丹所健が記録した1時間00分55秒)を42秒上回った佐藤からさらに4秒差をつけて中継した。
青学大の4区・佐藤一世(4年)は12月に部内に蔓延したインフルエンザにかかり、その後虫垂炎になったという。駒大は全日本後に股関節を痛めたため、前回と同じ5区ではなく当日変更で4区に入れた山川拓馬(2年)だった。
佐藤一世は、「レースプランは前半をハイペースで入って後半は耐えるだけとシンプルだった」と12月の体調不良の影響を微塵も感じさせず、最初の1kmをいきなり2分41秒というハイペースで入り、勢いをつける。4km通過は11分17秒。対する山川は練習不足への不安もあったのか4km通過が11分42秒と、追いかける側の鉄則といえる"突っ込む走り"をできず。8.9kmの二宮ですでに41秒差、小田原中継所では1分26秒差に開いた。
その差は5区の山上りでさらに広がり、往路優勝の青学大と2位の駒大の差は2分38秒に。一縷の望みを持って迎えた復路の6区では4分17秒差と開き、勝負が決した。
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