MGCで一山麻緒に対抗するのは? 鈴木亜由子ら有力選手が争うパリ五輪出場権の行方 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by REX/アフロ、アフロスポーツ、築田純/アフロスポーツ

【鈴木亜由子は前回MGC出場の経験が強み】

 鈴木亜由子(日本郵政グループ)も代表候補のひとりだ。

 前回MGCでは、前田(穂南/天満屋)と優勝を争い、2位で東京五輪の女子マラソン代表の座を射止めた。東京五輪は19位に終わったが、パリを目指して始動し、22年のベルリンマラソンで今回のMGC出場権を獲得。今年3月の名古屋ウイメンズでは2時間21分52秒の自己ベストで日本人トップの総合2位に入った。「トラックのリズム感で最後まで走り切れた」と上々の手応えを得て、着実にマラソン選手としての経験値を上げている。「前回のMGCで勝ち抜いた経験は強みです」と本人が語るように、MGCでの勝ち方は理解している。名古屋の優勝から勢いがあり、トラックで磨いたスピードをマラソンにも活かせるようになった。リラックスして臨めれば優勝する力があるだけに、前回同様に2位以上に入る可能性は非常に高い。

 また、読めない存在だが他選手の脅威になっているのが、前田穂南(天満屋)だ。

 前回のMGCは、3月の東京マラソンで日本人2位となった勢いのまま臨み、後半は独走状態で優勝。東京五輪は33位に終わり悔しさを噛みしめたが、その後、その悔しさを晴らすべくパリ五輪に向けてスタートした。だが、昨年8月の北海道マラソンは新型コロナに罹患して欠場、今年1月の大阪国際マラソンは足首を故障して回避した。うまく波に乗ることができず、一時は引退も考えたという。それでも、「もう一度五輪に出る」という自分の気持ちと向き合い、今年3月の名古屋ウイメンズで日本人2位の成績でMGC出場権を獲得した。

 今回のMGCに向けては「練習の消化率が30%」ということだが、高地の米国アルバカーキなどで練習を積んできた。ケガの影響なくスタートラインに立てれば、前回のように途中からぶっちぎりのレースを見せるかもしれない。

 ほかにも、安定感のある安藤友香(ワコール)も勝負強い選手として注目だ。

 前回MGC8位に終わり、マラソンでは東京五輪に出場できなかったが、10000mでの五輪出場を果たし、22位で終えた。今年は大阪国際女子マラソンに出場して日本人トップの総合3位に入り、好スタートを切っている。スピードと30キロ以降の粘りをつけるために、トラックシーズンは積極的にレースに出場し、関西実業団陸上競技選手権大会では5000m10000m優勝7月のホクレン千歳大会では5000mに出場し、途中まで自己ベストのペースで走り、15分22秒74MGCは、「2番以内とかではなく、優勝を狙って、タイムも19分台を出すぐらいでいかないと勝てないと思います」と、前回の経験を活かして積極的に行くという。後半の勝負時に、安藤自身が重要と考える「勇気」を持って一歩、前に踏み出すことができれば、パリの灯が見えてくるだろう。

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