「いつかは日本に帰りたい」日本女子ハンマー投げに現れた新星、名古屋育ちのマッカーサー・ジョイを知っている? (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by REUTERS/AFLO

【試合に出るため日本に「帰りたい」】

 現在24歳になったマッカーサーは、日本国籍を持ちながら南カリフォルニア大大学院に残り、陸上部のアシスタントコーチやマネージャー的な仕事をしながら練習もできるという環境で競技を続けている。

 6月の日本選手権では「日本に住んで、日本を拠点にして競技をしたい」とも話していたが、今は現実的にこう考えている。

「やっぱりコーチがアメリカにいて、コーチがいないと自分は投げられない。そうすると日本代表にもなれない。だから、とりあえず今はアメリカで練習と仕事をして、大会の時に日本にくるとか。時間はあまりないけど、時間のある時には日本に帰りたいと思っています」

 多く来日したい理由のひとつには、「日本の食事は大好きだから全部食べたいですよ。アメリカの寿司は美味しくないから、そういう食べ物は日本じゃないといけないと思うので」と笑う。

 アジア大会後は、世界ランキングのポイントを稼ぐために韓国の大会に出場するというが、これまでほぼすべてがアメリカ国内だった彼女にとって、所属できるスポンサーとしての企業が現れてくれたら、海外遠征をするなど戦いやすくもなる。その一方で、「スポンサーはこういう大会で結果を出さないと探せない。だから、ちゃんといい結果を毎回出すようになってから、(スポンサーを)探そうかなと思っています」と謙虚な考え方も口にする。

 これからはいろいろな大会で日本代表としての経験を積み、日本の投てきのすごさを世界で見せたいというマッカーサー。身長は178㎝と高いほうだが、今回のアジア大会で優勝したワン・ジエンや2位のザオ・ジエという中国の70mスロワーと比較すると、体格も含めて明らかな差はあった。

「私はまだ体重も軽いし、ウエイトトレーニングもあまり強くなくて重い重量は上げられない。だから来年へ向けても強くなりたいし、体重も増やしたいと思っています。(アメリカに)帰ってからはちゃんと練習を頑張ろうと思っています」

 試合開始前には、派手な照明のパフォーマンスが行なわれたが、マッカーサーにとってすべてが刺激的だった。これまでにない大きなスケールの大会に感動したというマッカーサーは、「またこういう場に戻ってきたい」と話す。

「次の2026年のアジア大会は、昔住んでいた名古屋で開催なので必ず出たいし、ちゃんと頑張って結果を出さなければいけないと思います。でもその前にはパリ五輪もあるから、それに向けても頑張りたいですね。日本の試合も、来年は日本選手権だけではなくグランプリもあるし、できたらたくさん日本に帰りたいので、たくさん挑戦したいと思っています」

 現状でも世界と戦える可能性を持つマッカーサーが、ここから環境を整えて国際舞台の経験を積み重ねられるようになれば、その力は一気に伸びるはずだ。そのためには結果を出すのが現時点での優先事項だが、世界陸上で活躍した女子やり投げの北口榛花(JAL)と、ともに日本の女子投てき界を、新たなステージに導いてくれる大きな可能性を秘めている逸材であることは間違いない。

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