駒澤大学の駅伝3冠達成なるか チームの現状とライバル中央大・國學院大の戦力を分析 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by アフロスポーツ

【昨年以上の駒澤大だが危機感も】

 昨年の3冠王者である駒澤大だが、ホクレンの千歳大会には、キャプテンでエースの鈴木芽吹(4年)が5000mに出場した。レースは800mから外国人選手に喰らいついていき、132455の自己ベスト、日本人トップ、総合5位につけた。

 だが、キャプテンは、開口一番こう言った。

「自分的には、全然ダメでした」

 汗をぬぐう表情は、厳しいままだ。

「最低限、自己ベストを切って、学生記録も意識しろと監督に言われていたので、それを目標にしていました。でも、思ったよりも風があってペースが上がらなくて...。ラストをしっかり上げて記録を出そうと思ったんですけど、ほぼイーブンで外国人選手に置いて行かれたのでダメですね」

 鈴木は2月のアメリカ遠征でふくらはぎを痛めて練習を離脱。5月のゴールデンゲームズinのべおかの5000mで復帰し、続く日本選手権の頃には足に不安があり、「これ以上、走ってもしょうがない」と練習を中断したりすることもあった。だが、ホクレンに向けての調整は、ふくらはぎの痛みもなく、順調に仕上げることができた。

「自己ベスト更新という最低限の目標を達成できたのはよかったですけど、やっぱり満足はできないです。学生記録のペースで行きたいと思って走っていたので、悔しいですね」

 それでも自己ベスト更新の結果を出して、チームメイトにキャプテンとしての背中を見せた。また、チーム全体で見れば、トラックシーズンは個々の奮闘が目立った。関東インカレでは、このレースの1か月半前に13か月ぶりに復帰した唐澤拓海(4年)が10000m282683を出し、総合4位、日本人トップの成績を収め、伊藤蒼唯(2年)が8位。5000mでは安原太陽(4年)が1402317位入賞、ハーフマラソンでは赤星雄斗(4年)が優勝、山川拓馬(2年)が2位に入り、ワンツーを決めた。日本選手権5000mでは佐藤圭汰(2年)が1324294位入賞、ホクレン網走大会5000mでは赤津勇進(4年)が134379の自己ベストを出し、富士裾野トラックミートの5000mでは山川が135692の自己ベストを出した。

 昨年、3冠達成に貢献した選手は好調を維持し、佐藤や唐澤も状態が上がってきており、選手層でいえば昨年以上になりそうな気配だ。

 だが、鈴木は危機感をあらわにしている。

「こないだミーティングで話をしたんですが、『今のままじゃ絶対に駅伝で勝てない』と言いましたし、藤田(敦史・監督)さんからもそういう言葉もいただきました。今まで、みんな、頑張っていい結果を出していたんですけど、その分、疲労がピークで今、走れていない選手が多いですし、結果が出た分、安心しちゃっている部分があるのかなというのを感じて...そういうところがあると実力があっても足元をすくわれてしまうので、まだまだって思います」

 厳しい見方だが、それも昨年の駒澤史上最強と言われたチームを見てきたからこその基準なのだろう。今年の目標は3冠だが、昨年の史上最強のチームを越えるという狙いがある。

「昨年のチームも今頃は全然ダメだったんで、今年はまだ巻き返せる時期ではあるんですけど、だからって今のままではダメです。これまでは個人を重視してきた部分があったんですけど、トラックは一区切りついたので、ここからは自分もチームとして結果を出すために駅伝に向けてやっていく方向にシフトしていかないといけないと思っています」

 そのために鈴木はキャプテンとして先頭に立ち、しっかりとチームを引っ張っていく覚悟だ。

「僕が常に言っているのは、チームのための走りとか行動を心掛けようということ。そして、3冠を獲ったチームのプライドと、これから3冠を目指すチームとしてのプライドをしっかり持ってやろうということです。これから夏合宿で、どこまでチーム力を上げられるか、ですね」

 選手層と経験値では、大学ナンバー1であることは間違いない。そこに駅伝に向けての一体感が醸成されていけば、今年も駒澤大を止めるのは容易ではない。

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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