「卒業生の抜けた穴はまだ埋めきれていない」エース不在、ハーフも結果が出ず...箱根駅伝の王座奪還を狙う青学大の明と暗 (3ページ目)
【立ちはだかるのは駒澤大】
田中はそう語るが、その前に大きく立ちはだかるのが駒澤大だ。昨季は圧倒的な強さで3冠を達成し、その勢いは今シーズンも続いている。関東インカレでは、10000mで唐澤拓海(4年)が日本人トップ、ハーフではワンツーフィニッシュを決めた。鈴木芽吹(4年)、篠原倖太朗(3年)、佐藤圭汰(2年)ら主力抜きでも結果を残しており、分厚い選手層は大学ナンバー1だ。
今回の関東インカレで、青学大の選手の駒澤大への対抗意識は、相当に強かった。佐藤一世は、ラスト、先を行く駒澤大の唐澤に追いつこうと必死の走りを見せた。
レース後、佐藤一世は悔しそうな表情を見せて、こう言った。
「今年は、駒澤大に負けたくないです。昨年はあれだけの差を見せつけられ、圧倒されて負けました。自分だけではなく、みんな、駒澤大は倒すべき相手だと思っているので、そのためにも今回のレースも勝ちたかったんですが......他のレースでは勝っていきたいと思います」
田中も「昨年、駒澤大は3冠という成績を残したので、自分たちも負けてられない。強い選手が揃っているので、同じレースで当たれば意識しますし、負けられないです」と、佐藤一世と同じくふだんのレースから駒澤大に勝ち、勝ち癖をつけていきたいと考えている。どんなレースでもコツコツと勝ちを重ねていけば、駒澤大に負けないメンタルが身についていくだろう。
そうして目指すは、箱根駅伝の王座奪還になる。
志貴は、そのために不可欠な要素があるという。
「チーム作りは、全体で取り組んでいきますが、そのなかでも4年生である僕たちがチームを引っ張っていかないといけないですし、チームとしてまとまりも出てこないと思います。今回、(佐藤)一世や山内が10000mや1500mで入賞してくれたのを見ていると4年生として引っ張っていく意識が出てきているのかなと思いました。同時に、自分も(勝利の場に)戻ってこなくちゃいけない選手だと思うので、関東インカレでの負けを次のレースに活かして4年生としての強さを見せていきたいと思います」
原晋監督は常々、「駅伝は4年生の力が重要」と語っている。これから志貴キャプテンが結果を出し、4年生がチームを引っ張る流れができたなか夏合宿で走力をつけることができれば、秋は実りの季節を迎えることができるはずだ。そうやって青学大は、これまで勝ってきた。
今年の青学大のスローガンは、「All For Green」。
果たして、3大駅伝すべてを青学カラーに染められるか──。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。
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