校内放送で部員募集、部員4人でのスタート。出雲駅伝優勝・東京国際大の転機と進化 (2ページ目)

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato
  • photo by Kyodo News

 4区は5000m13分台の白井勇佑(1年)が区間5位、全日本と箱根に出場経験のある5区の宗像聖(3年)が区間3位。安定感のあるレース運びで首位を独走する。6区のヴィンセントにタスキが渡ったときには、2位の東洋大に28秒もの貯金があった。駒大は2分22秒も後方にいて、大志田監督は少しパニックになっていた。

「勝つなら逆転だと思っていたので、逆に田澤君が追いかけてきて、抜かれたらどうしようかなと心配しちゃいました。ヴィンセントは暑いのが好きではないので、無理せず、ゴールまでしっかり走ってくれればと」

 もちろん、そんな不安は杞憂に終わる。箱根駅伝の2区と3区で区間記録を保持するヴィンセントは10.2kmを悠々と駆け抜け、区間2位の田澤に21秒差をつけて区間賞を獲得。3年生以下のオーダーで臨んだ東京国際大は、2位の青学大に2分近い大差をつけて、大会史上初の初出場・初優勝を成し遂げた。

「日本人選手が課題だったので、いい形で流れを作ることができて、ヴィンセントに楽をさせることができました。正直、優勝は来年、再来年に目指せればいいかなと思っていたんです。でも、初出場での初優勝に意味がある。それが現実になるのは想像していませんでしたが、今日は出来すぎでしたね」

 中央大OBの大志田監督が駅伝部をゼロから立ち上げて、11年目での快挙だった。創部初年度の2011年は校内アナウンスで部員を募集。4人の選手でスタートした。

「最初は大学の名前すら覚えてもらえず、有力選手はなかなか入ってくれませんでした。5000m15分00秒前後の選手を強化していき、5年目に予選会を突破。箱根駅伝に出場するようになりましたが、勧誘は厳しい状況が続きました」

 東京国際大を次のステージに昇華させたのが伊藤達彦(現・Honda)の存在だった。高校時代は5000m14分33秒がベストにすぎなかったが、大学で急成長する。4年時(2019年度)にユニバーシアードのハーフマラソンで銅メダルを獲得すると、駅伝でも大活躍。絶対エースの快走で初出場の全日本は4位、箱根でも5位に入り、ダブルでシード権を獲得した。伊藤は大学卒業後、東京五輪10000m代表として世界に飛び立っている。

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