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「歯科医か、ハードルか」110mH日本新の金井大旺が明かす進路選択 (5ページ目)

  • 宮部保範●取材・文 text by Miyabe Yasunori
  • photo by Sankei Visual

── 大学卒業後、2019年2月から伝統あるミズノトラッククラブに所属し、クラブの次なる伝説をつくるべく母校法政大でトレーニングに励んでいる。冒頭に記したように今年の織田幹雄記念陸上で、13秒16の日本新記録を叩き出した。このタイムは、前回五輪(2016年リオ・デ・ジャネイロオリンピック)の銀メダルに相当する。

金井:僕の競技人生をハードルに例えるなら、今は10台中1、2台目あたりだと思います。というのも、まだ東京五輪の出場すら決定していませんから。日本人選手のレベルもすごく上がっています。そのなかで出場権を獲得して、やっと5台目くらいという感じでしょうか。まずはそこに向けて全力を注ぐ。その上で、東京五輪で納得のいく走りをする。僕にとって東京五輪は節目。110mハードルをやり切ってから、歯科医の道に進みたいと思っています。
 
 今振り返ってみると、進路に迷った高校3年の夏、仮に歯科大を選んでいたら、今の僕はなかった。間違いなく東京五輪を目指せるレベルには達していなかったと思います。あと、両親にも感謝したいですね。僕のやりたいこと、進みたい方向を尊重して、比較的自由にやらせてもらえた。そのぶん、自分の判断に責任を持つという意識も生まれたと思います。

 目の前にあるやるべきことをしっかりとやる習慣は、のちの人生にすごく生きてくるなと感じています。高校時代に学業をおろそかにしなかったことで、今こうして、競技に邁進しながらも、歯科医への道も残されている。勉強やスポーツだけでなく、すべてのことに通じるかもしれませんが、何事も最後までやり切ることはすごく大切だなと感じますね。

* * *

── 金井が、ことあるごとにツイートする言葉がある。

「1周まわって、もう1回」

 大事なことを丁寧に繰り返して、足元を固める。金井の本心だと思う。

 日本記録更新の翌日(4月30日)のオンライン会見で、東京五輪に向けてトレーニングをするかたわら、空き時間に歯科医に向けた勉強も続けていることを明かした金井。東京五輪で駆け抜けるゴールラインは、金井にとってスタートラインでもある。


Profile
金井大旺(かない・たいおう)
1995年9月28日、北海道生まれ。ミズノ所属。専門は110mハードル。小学生の時に陸上をはじめる。函館ラ・サール高を卒業後、法政大に進学。2018年日本選手権で初優勝。2021年4月29日、広島で開催された第55回織田幹雄記念国際陸上競技大会で13秒16の日本新記録を樹立した。現在は東京五輪出場に向けて、母校法政大を拠点にトレーニングに励んでいる。

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