東洋大が区間賞ゼロも総合3位。酒井監督が挑戦した経験値に頼らない戦略 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

「復路に関しては、前回7区6位の蝦夷森章太(3年)や、前回9区で9位、全日本は5区で区間3位の大澤駿(4年)もいましたが状態がよくなかったので、ともに初出場の4年生の野口と小田太賀(4年)を8区と9区に起用しました。中でも野口は一般入試で入部していて、1年と2年の時も16人のエントリーには入っていましたが、勝負できるところまではいっていない選手でした。

 それでも走れなかった時期から、しっかりと区間の攻略方法なども考えていたようで、今回も最後の箱根に出られればいいではなく、自分で区間を攻略していくんだと考えて頼もしい走りをしてくれました。東海大を抜いて3位に上げた遊行寺の手前のポイントは、2年前にうちの鈴木宗孝(当時1年)が区間新で走った東海大の小松陽平選手(当時3年)に抜かれたところです。そこから切り替えてペースを上げていく走りをするのが一番いいと話していたので、そのプランどおりの走りをしてくれました」

 9区で区間7位の小田も3年時の1万mは29分57秒15だったが、4年では29分09秒53までタイムを上げてきていた選手。10区で区間9位の清野太雅(2年)も1年時には30分41秒24だった記録を29分03秒59まで上げていた。

「野口も小田も清野も努力型の選手なので、そんな選手たちがいい走りをしてくれたことで、下級生たちも『自分たちもああなりたい』と思ってくれる。そういう面でも来年につながる走りだったと思います」

 じっくりと力をつけてきた4年生のふたりの好走は、新4年生の蝦夷森や腰塚遥人、1年時以来走っていない鈴木だけではなく、今回は走れなかった2年生や1年生にも刺激になると酒井監督は言う。

 区間賞ゼロの3位ではあるが、新たな出発を意識する東洋大にとっては意味のある順位となった。

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