東洋大が区間賞ゼロも総合3位。酒井監督が挑戦した経験値に頼らない戦略 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 5区には、前回の箱根も5区を走って、区間新で区間賞を獲得していた宮下隼人(3年)を起用した。

「宮下は昨年の経験が非常に大きく、平地でも全日本の8区で区間4位になったように頭一つ抜け出していて、チームを引っ張る存在になってくれていました。『宮下に頼ってはいけない』と(選手たちに)話してはいましたが、彼がいる安心感が往路序盤の若い選手には大きかったと思います。

 ただ、5区でも創価大の三上雄太くん(3年)にあそこまで走られたので捕らえられなかったですね。でも、優勝候補の青学大と東海大がつまずいて後ろに行ってくれたのは大きかったと思います」

 往路は創価大に1分14秒遅れの2位で、駒澤大には7秒差という総合優勝も見える位置だった。続く6区には、九嶋恵舜(1年)を起用した。

「6区に関して今年は、誰を使っても初めてだったので59分台前半で来てくれればと思っていましたが、40秒くらい悪かったのが計算外でした。そこでつけられた差を7区の西山でカバーしたかったのですが、2区間連続で区間10位以下となってしまいました......。逆に創価大は7区を区間2位で走り、そこで優勝争いは厳しくなったと思いました。西山がうまく詰めてくれれば、8区の野口英希(4年)は調子がよかったので、逆転するならそこかなと思っていたんです」

 1年と2年の時は、1区で連続区間賞を獲得していた西山だが、3年からは故障の影響からか、駅伝では結果を出せない走りが続いていた。7区を走った11月の全日本でも4位にいた駒澤大と9秒差の4位でタスキを受けながらも、それを1分13秒差まで広げられてしまう予想外の凡走をした。期待されているとわかっているからこそ力んでしまい、後半に失速してしまったのだ。酒井監督は「精神的なものが大きい」と分析する。

 流れが重要な駅伝では、前の区間が悪い走りだと次の区間の選手がそれに影響されてしまうことが多く、それがエースとなれば影響力は大きい。だが、その悪い流れを断ち切ったのが、8区野口の区間2位の走りだった。酒井監督は「そこから9区と10区もしっかり走ってくれたので、価値のある走りだった」と振り返る。

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