アイルトン・セナと中嶋悟のいたF1チームがホンダ陸上部の理想

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

知られざる実業団陸上の現実~駅伝&個人の闘い
Honda(1)

「個性的なチームだよね、と言われます。よくあれだけ個性豊かなタレントを抱えるなって......(苦笑)。たしかに、自分たちのチームは個性という点では強烈だと思いますね」

 Honda陸上競技部の小川智監督は、チームの特徴についてそう語る。

個性派の選手たちをまとめる Hondaの小川智監督個性派の選手たちをまとめる Hondaの小川智監督 陸上部は創業者・本田宗一郎の開拓精神を受け継ぎ、1971年発足以来、独自の道を歩んできている。その結果、現キャプテンの設楽悠太をはじめ、リオ五輪男子マラソン代表になった石川末廣(現・コーチ)、藤原正和(現・中央大陸上部監督)ら実力を兼ね備えた個性豊かな選手を輩出してきた。また、ニューイヤー駅伝では、1994年、2018年と2度、準優勝を果たしている。

「"人間尊重"が弊社の基本理念であり、"夢"が原動力。それをチームでも大切にしているので、選手の"夢"や"目標"を中心に個で物事を考える。それがうちのチームの強みですし、だからこそ個性的な選手が出てきた。ただ、それが弱みにもなっているのかなとも思います。個々の向かう先を駅伝に集約する時、まとめきれない。それが駅伝で優勝できない要因のひとつではないかと考えたりもします」

 現在の陸上部のイメージは、エースの設楽と重なるところが大きい。昨年のMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)では序盤からハイペースで飛び出し、レースを引っ張った。そうした設楽の選手としての個性は、失敗を恐れず、我が道をいくHondaらしさに見える。

 小川監督は2019年4月に現職となり、MGC、そして東京マラソン2020と2つの大きなレースで設楽を支えてきた。残念ながら東京五輪マラソン男子代表の椅子は獲得できなかったが、2020年、小川監督は設楽をキャプテンに任命した。

「今シーズンから彼がチーム最年長になり、実力は申し分ない。ここ数年で人間的にも成長したので、それを踏まえてキャプテンにしました。設楽は自分についてこいというタイプではないのですが、私は彼に一般的なキャプテン像を求めているわけではありません。設楽がやっているところを、みんなが見て、どう感じるかを重視しています」

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