「目標は世界一のマラソンチーム」三菱重工はこだわる独自の選手育成 (2ページ目)
では、三菱重工が求める選手とは、どのようなタイプなのだろうか。
「ウチは派手さのあるチームではないですし、すごく素質のある選手が来るわけでもない。タイムも見ますが、コツコツと練習を積み重ねる粘り強い選手。それが一番マラソンに合う選手だと思います」
黒木監督はスカウティングに行く際、選手の目標などを調べ、その際、口説き文句も考えていく。スカウティングをするなか、最近の学生の競技志向に変化が見られたという。
「MGCをきっかけにマラソンをやりたいという学生が増えました。以前は、ただやりたいみたいな感じだったんですが、『マラソンをやりたい。ここに行きたい』とはっきり言ってくれるようになりましたね」
MGCはオリンピック本番さながらの注目を集め、非常に盛り上がった。実際、黒木監督もその熱のすごさを感じた。MGCがかつてない盛り上がりを見せた要因をどう考えていだのだろうか。
「初めてのことですし、一発選考のレースで、その緊張感が伝わったんだと思います。僕は何回も見返しましたけど、中村(匠吾)、服部(勇馬)、大迫(傑)の3人が競ったレースは、見たことがない迫力でした。こういうレースに慣れた選手がメダルを獲れる選手になると思います。私たち指導者もMGCのような場で勝負させたいという気持ちがありました。MGCでどこにも負けないマラソン部というのを見せたかったですし、ウチから代表選手を出せればよかったんですけど......」
MGCには井上、木滑、岩田の3人が出場した。なかでも2018年のアジア大会マラソンで金メダルを獲った井上は、とりわけ大きな注目を浴びた。しかし、まさかの27位という結果に終わった。
「MGCはアジア大会とはまったく別ものでした。練習もマンネリ化してしまったのか、井上の心に火をつけられなかった。正直、ここで失敗するのか、情けないって思いましたね」
東京五輪のマラソン代表を決めるMGCは、劇的な展開、注目度を含めて成功に終わった。その一方で実業団のレースは、位置づけ、規模ともMGCとはずいぶん異なるが、注目度は高くない。
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