日本のクイーン・オブ・アスリートは寂しがり屋。ヘンプヒル恵の素顔 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文text by Oriyama Toshimi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Mukarami Shogo

――大学生の頃は寮生活でいつも仲間と一緒にすごしていて、今はひとり暮らしだと思いますが、寂しくはないですか?

 寂しいです。寂しすぎて、用事がなくても大学時代の友達に電話をして、会話をしないままつなぎっぱなしにしていることもあります(笑)。

――就職して2年目に入り、大人になったなと感じることはありますか?

 以前は苦手だった「自分の思いを言語化する」ことができるようになりました。試合後にメディアに向けて話すときも「なんて言えばいいんだろう......」って止まってしまうことがあったんです。それが、今はだいぶ頭の中で整理して伝えられるようになりました。

 あともうひとつ! 去年、陸上教室を福井で開いて小学生に教えたんです。その時に、ひとりの子が『先生、これどうやったらいいんですか?』と聞いてきてくれて、それで『えっ、私先生に見えるの?』って思ったんです。それまでは私も指導者の話を聞く立場で、教えてくれる人が大人だと思っていたのに、今は私が小中学生からは私が大人に見えるんだって、びっくりしちゃいました。

 以前コーチが、「大人と子供の差は、与える側か与えられる側かの差だ」と言っていたのを思い出して、「今の私はこの子たちにとっては与える側なのかもしれない」と考えると、自分が大人になった気がしましたね。

――ご両親は試合には必ずかけつけてくれていますよね。

 はい。感謝の気持ちを込めてボーナスで箱根旅行をプレゼントしました。

――就職して応援してくれる人も増えたとか。

 それまで陸上を知らなかったはずの会社の人たちも、七種競技にすごく興味を持って応援をしてくれています。そういう気持ちがすごくうれしかったので、今はシンプルに応援してくれる人や会社のために頑張りたいと思っています。

プロフィール
ヘンプヒル恵(ヘンプヒル・めぐ)
1996年5月23日生まれ。京都府出身。アトレ所属。
七種競技/100mハードル
アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた。
中学生の時に陸上競技と出会い、中学3年で全日本中学体育大会の四種競技で優勝。
高校3年で出した七種競技の日本高校記録(5519点)は、いまだ更新されていない。
大学では日本選手権3連覇を達成している。

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