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マラソン鈴木亜由子の指導者が語る現状。
有力選手の勢力図が変わる可能性 (5ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 だから、こういう時期は練習で体のスタミナを作るだけではなく、本を読むなどして、じっくり自分と向き合い、想像力を高め、心のスタミナもしっかりとつけてゆこうと選手たちには話しています。長距離はエネルギーを消耗するスポーツなので、いかにその消耗を軽減するか、という課題があります。その点では、それぞれの選手がレースのない期間をきちんと受け止め、精神的にも成長してもらいたいんです。いろんな意味でのエネルギーを充電して溜めを作ることは、次のピーキングに向けて必ず生きてくると思います」

 髙橋監督は、今こそ自分たちが実業団チームに所属して、恵まれた環境にあることを実感できる時期だとも話す。ケニアやエチオピアなど、海外の選手たちは、一部のトップ選手を除けばレースに出て賞金を稼ぎながら競技を続け、生活している場合がほとんどだ。その中から強い選手がどんどん輩出してくる状況だったが、今はレースがなくなったことで、そのサイクルが一時期的に途絶えてしまう可能性もある。なかには、生活に不安を感じる選手たちもいるようだ。つまり、世界中で行なわれているロックダウンが解除されたあとには、選手の勢力図が変わってくる可能性もある、というわけだ。

 日本人選手は、実は自分たちが恵まれた環境にいることをどう受け止めているのだろう。今は様々な活動に制約がかかる苦しい時期だからこそ、選手たちにとっては、自分の置かれた環境や競技への向き合い方をもう一度しっかりと考えるよい機会なのかもしれない。

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