2019.05.01

末續慎吾が世界陸上で銅メダル。
陸上短距離界の「もう一歩」の壁を破る

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by REUTERS/AFLO

「(頭が)真っ白になっただけのシドニー五輪と違って、今度は冷静だったし、決勝だからそこでどんなレースをしたか覚えておこうと思ったんです。準決勝までを見ていて、1位になったカペルと2位の(ダービス・)パットン(アメリカ)は『動いているな』と思っていましたが、前半はカペルともそんなに離れていなかったので『よさそうだな』と思って。

 でも直線に出たら、足がグニュとなって頑張らなければと思った瞬間、今度は太腿にピクッときて。そこからは何も覚えてなくて、最後の3mくらいでフワーッと視界が戻ってきました。それで気がついたら頭を下げてゴールしていて。前にはふたりしか見えなかったので『アレッ?』と思ったけど、それから放心状態でした」

 最後に末續は、「自分がメダルを獲ったことで、これからは決勝に進む日本人選手も増えてくるのではないか」と話した。

 その言葉通り、今や桐生祥秀や山縣亮太らが、世界でメダルに絡む走りをしている。そして、この銅メダル獲得はリレーにも大きな影響を与えた。

 アテネ五輪から遡ること8年。96年アトランタ五輪では、朝原宜治と伊東浩司が好調な走りをして、朝原が100mで、伊東も200mで準決勝進出を果たした。2人とも惜しくも決勝進出とはならなかったが、この大会で、4×100mリレーを制したカナダの4走、ドノバン・ベイリーのラップタイムが8秒95と、驚異的なタイムだったと書いてある新聞を見て伊東が、「このくらいなら朝原も走れるんじゃない」と話しかけると、朝原も「そうだな」と軽く答えるくらい、自分たちに可能性を感じていた。