ラストシーズンで気持ちに変化。
「東海の異端児」が駅伝参戦に意欲

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Matsuo/AFLO SPORT

東海大・駅伝戦記 第48回

「東海の異端児」と呼ばれる選手がいる。現在4年生だが、一度も大学3大駅伝を走ったことがない。それ自体は、特別なことではないかもしれない。だが、駅伝に強い東海大にあって、彼はそもそもそのメンバー入りを争う舞台にさえ上がってこなかった。

 彼の得意の種目は1500m。

「よく長距離じゃないよねって言われます」

 そう苦笑するのが、木村理来(りく)である。

これまで一度も大学3大駅伝に出場したことがない木村理来これまで一度も大学3大駅伝に出場したことがない木村理来 4年になっても基本的なスタンスは変わらない。スピード強化とウエイトトレーニングに集中する日々だ。

 この日は、兵庫リレーカーニバルで1500mを走る予定になっていた。昨年も出場し、スタートからレースを引っ張って先頭を走るもラスト1周で失速し、終わってみれば12位だった。同レースに出走した館澤亨次(たてざわ・りょうじ)は2位、關颯人(せき・はやと)が3位に入賞するなか、「最後、もたなかった。悔しいっすね」と木村は表情をしかめていた。

 今回は10人と出場者数は少なかったが、舟津彰馬(中央大4年)の持ちタイムが3分38秒65でトップ。木村は3分42秒78で全体では5番目。館澤はアジア陸上選手権に出場のため不在で、優勝を狙えるチャンスは十分にあった。

 木村のレーススタイルは「とにかく攻める」だ。

 両角速(もろずみ・はやし)監督からも「積極的に行け」と言われ、いつも序盤から前に出て、レースを引っ張っていた。今回もいつものように先頭でレースを引っ張っていくのだろう......問題は、最後のスパートがもつかどうかだと思っていた。

 ところが、1周目はうしろから2、3番手を走る。いつもとレース展開が違う。それは2周目になっても変わらず、3周目になっても後方4番手あたりを走っていた。ラストスパートに力をためて、爆発させるのかと思ったが、舟津がそのままトップでゴールし、木村は4位に終わった。

「あー、入賞ダメかぁ」

 息を切らしながら、小さくつぶやいた。がっかりした表情を浮かべたが、驚いたのは順位よりもいつもとレース展開がまったく異なっていたことだ。先行逃げ切りが木村の真骨頂だったはずだ。

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