2019.05.03

腹痛に悩むランナーを救えるか。
筋膜の緩和が改善のカギだ

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 ランナーにとって腹痛は悩みの種だ。いつ起こるかわからないなか、不安を持ちながら走ることは心理的な負担となり、発症すると勝負はもちろん、タイムへの影響は非常に大きい。

 正直なところ、キリキリと脇腹を襲う差し込み痛のメカニズムは十分に解明されていないのが現状だ。個人によって発症するタイミングも症状もそれぞれ異なる。メディカルチェックを受けてもどこも悪いところがないのに、なぜかレース中に起きてしまうことがある。

 もちろん、薬を飲用したり、水分を摂取したり、ストレッチをしたり……それぞれ対策を講じてきているが、確証されているものはない。

腹部の筋膜をほぐすことで鎮痛効果があると中本亮二氏(写真中央)は言う 中本亮二(白金台整体院)は、国立スポーツ科学センターアスリートリハビリテーションに勤務していた時、ランナーから腹痛についての相談をよく受けていた。個人的に研究論文を読み、ドクターと相談しながら「どうしたらランニング中に起こる腹痛を防げるのか」をテーマに、6年ぐらい前から本格的に調査、研究を始めた。

 その過程で4年前に知人の紹介で受講したのが、イタリアにあるFascial Manipulation Institute(筋膜マニピュレーション研究所)の国際コースだった。このコースは主に筋膜をターゲットにした手技治療をいかに効率的に展開していくかについてレクチャーしていた。コースの後半では、その筋膜を治療することで、筋や関節の痛みだけでなく内臓の機能障害に対しても効果的な方法が紹介された。

 中本は長距離ランナーに対するトレーナー、フィジオセラピスト(理学療法士)としての経験に、コースで学んだことを掛け合わせて「ランナーの内部機能障害に対するアプローチ」を独自に考えた。

 重要な着眼点は“筋膜”だ。

 筋膜とは、簡単に言うと筋肉を包み込んでいる膜のことである。それは腱にもつながり、骨を包む骨膜とも連結している。

 筋膜については、近年、研究が盛んになり、単に筋肉を包む膜ではなく、内臓を含めた全身に連結している組織で”ファッシャ(fascia)”と呼ばれている。