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まるでドラマ『陸王』のように、
草創期の箱根駅伝を足袋職人が支えた (6ページ目)

  • 石井孝●文・写真 text and photo by Ishii Takashi

 レースの途中、何度も心が折れそうになった。「でも、みんなの想いをつないで走ったんです」と、谷口は当時を思い返して言う。

「タスキをつなぐのはチームの仲間だけじゃないんです。コンピューターで何でもできる今の時代と違って、僕たちはモノのない時代に、いただいた一足のシューズを大事に履くために職人さんと工夫を重ねた。学生の僕によくしてくれた営業さんとか職人さんとか、みんなの想いをつないで、その集大成でレースに出るわけだから、ここで折れてしまってはみなさんに申し訳ない。だから、そう簡単にはレースを投げられなかった」

 金栗が発案した駅伝で、辛作の想いを受け継ぐハリマヤシューズを履いた学生ランナーが区間新記録を出す。そうした幸せな時代が確かにあったことを、その黄色いシューズは物語っていた。

(つづく)

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ドラマの原作、ランニングシューズ開発への挑戦を描く
池井戸潤の小説『陸王』の詳細はこちら>>

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