駅伝2冠を逃した東海大の「最強世代」。どこに誤算があったのか? (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 先頭をいくムイルと太田智樹(早稲田大)のと差はわずか4秒だ。しかし、10kmを超えてから鬼塚がトップ集団から遅れ始めた。表情が苦しそうに歪み、前に進んでいかない。

「最初に前に出た時、後続を離したかったんです。でも、引っ張りが中途半端になり、強風を受けてペースが上がっていかず、何度もペースが変わる中、疲れが出てきました。後ろがペースアップした時は、ついていけなかった。まだまだ力が足りないです」

 体重が軽いので、強い向かい風に苦しんだ。しかも、鬼塚はスタート直後から他大学から徹底的にマークされていた。鬼塚が先頭に立った時、自ら前に行く気持ちもあったのだろうが、それと同時に周囲の選手に押し出されるように前を走らされた感もあり、消耗していくのが見て取れた。駆け引きやペースが頻繁に変わるレースで疲弊し、鬼塚は区間9位と"らしくない"順位に終わった。両角監督のレースプランは早々に修正を余儀なくされたのである。

 1位通過の東洋大との差は35秒。東海大は8位だった。

 2区は塩澤稀夕(きせき/1年)だ。

 出雲前ぐらいから調子を上げ、平成国際大競技会の1万mでは28分36秒15の自己ベストを出し、全日本大学駅伝の2週間前のポイント練習でも余裕があった。この時点で全日本の出走をほぼ確定させたが、問題はどこを走るかだ。初駅伝で長い距離に不安があるので、距離の短い3区(9.5km)での起用が濃厚かと思われた。しかし、蓋を開けてみるとエース区間の2区での起用だった。

 両角監督の塩澤への期待の大きさがうかがえる。

「塩澤は、最初は3区を予定していたんです。でも、そこではもったいないぐらい調子が上がっているので思い切って2区に起用しました。多少リスクがありますが、塩澤をここで使うことで他に余力ができた。田村くん(青学大)が2区にいますが、彼についてどうのこうのではなく、上位争いができる区間を担っているので粘って走ってほしい」

 塩澤は向かい風の中、懸命に走った。

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