マラソンに対応中の神野大地。頻発するレース中の腹痛はなぜ起きる? (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun


「すごい変化だと思いますよ。神野はもっと上のレベルに行けると思うし、やらせたいことが増えてきた。五輪でメダルを獲った選手の感覚と似ているんで、そういう意味ではすごく頼もしい。ただ、このまま順調にいくとは思っていないけど......」

 中野は今後に期待感を抱きつつも慎重だ。スケジュール通りに成長してきても突然アクシデントが起きたり、伸び悩む選手をたくさん見てきているからだ。

 宿舎に帰り、氷をビニールに入れ、足と尻、腰回りに巻いていく。約20分間、下半身をくまなくアイシングするのだ。

 神野は網走合宿後、9月1日から16日までフラッグスタッフにある北アリゾナ大で2000mの高地トレーニングをした。青学大時代、御嶽合宿で高地トレーニングを経験していたが、2000mを超える場所での合宿は初めてだったという。

「2000mを超えるとレベルが違いますね。32kmを1km3分36秒ペースで走ったんですけど、心肺がヤバかった。乾燥しているんで給水するんですが、その時、一度呼吸を止める感じになるじゃないですか。給水を取った後、ハーハーとめっちゃ呼吸がキツくなるんです。でも、あそこで泥臭くやれば絶対に強くなるだろうなぁって思いますね」

 多くのアスリートたちが足を運ぶフラッグスタッフだが、拠点となる北アリゾナ大には
広いスペースや1周320mのレーンが2つある巨大なジムがあり、インドアコースと、外には広いトラックコースがある。標高2100mにある近くのバッファローパークにはサラサラの砂のクロカンコースがあり、神野曰く「最高のコース」だったという。2000mを超える環境で、これだけの施設が揃っているところは日本国内にはない。しかし、神野はここで練習することが本当にベストなのかどうか判断が難しいという。

「環境がいいし、泥臭くやれば強くなれるなって思うけど、高地なので練習量をなかなか上げられないですし、踏み込んだ練習ができないんです。日本で練習すると設定タイムも予想がつきますし、一段一段確実に階段を登っていける感じじゃないですか。もちろん、アメリカでの高地トレーニングにフィットすれば、逆に2段3段と飛び越えていける可能性があるけど、個人差があるので0.2段しか上がらない可能性もある。今回は2週間だけだったので、1カ月やったら違うのかなぁというのもありますが、これからアメリカでやるかっていうとなかなか判断が難しいですね」

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