桐生が壁をぶち破る。日本は「東京五輪で9秒台がゾロゾロ」となるか (5ページ目)

  • 折山淑美●取材。文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 10秒01を出した2013年以来、周囲からの9秒台への期待を一身に背負ってきた。苦しい時を知っているからこそ、誰もが祝福する9秒台が生まれた。

 レース後、桐生は「9秒台を出したからといって、僕の競技人生が終わるわけじゃないし、世界のファイナリストになるには持ちタイムが9秒台では普通なので、そのスタートラインにやっと立てたという感じ。これから先、もっとタイムが上がるように練習をしていきたい」と語った。

 レースを分析すれば、体調としては7~8割の状態で出した9秒台でもある。一夜明けた10日には、「これからどこまで伸ばせるかわからないけど、ここからの伸びしろも自分の中にはまだまだあると思っています」と話し、さらにこう続けた。

「山縣亮太(セイコー)さんからも『おめでとう』とLINEが来た時は感動し過ぎてちょっと泣きそうになりました。一緒に9秒台を競っていて、もし山縣さんが先に9秒台を出していたら、僕は素直におめでとうございますと言えるか正直わからないので......。山縣さんがライバルというのは高校の時から自分の中では変わらないし、記事の中のコメントでも、今回の記録を上回るような記録を出したいと言ってくれているので、また一緒に走って勝負を楽しんでいきたいなと思います」

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