【月報・青学陸上部】3冠に王手。
接戦だからこそ見えた底知れぬ強さ (4ページ目)
森田は、徐々に差を詰めていた。5km付近では40秒差まで縮めた。バスを降りた原監督は、小関一輝マネージャーに「今、何秒差?」と聞く。
「37秒差です」
正確なタイム差がすぐに返ってくる。小関がトップとの差を時計で計っているが、寮では稲村健太マネージャーがさらに正確にタイムを計ってノートに書き記している。トップとの差はもちろん、ライバル校とのタイム差も1kmごとに計算する。青学の選手たちはツイッターとLINEでつながっているので、そこでタイム差や待機している選手の情報を流し、共有しているのだ。そして、必要な場合は携帯で連絡を取るようにしている。
沿道にいるファンの声が大きくなった。トップの早稲田大がやってきた。少し遅れて初駅伝ながら自分のペースを崩さずに快走する森田が目の前を通り過ぎた。
「37秒差だ。行けー!」
原監督が絶叫した。森田は35分39秒の区間賞を取る見事な走りを見せた。トップの早稲田大との差は37秒。4区安藤のところで最大1分7秒開いた差を小野田と森田で30秒縮めたことになる。
「次の中村はスピードランナーだし、(アンカーの)一色に30秒以内でつないでくれたら絶対に勝てる」
原監督の表情にその自信が宿った。一時は敗戦を覚悟したように厳しい表情を見せていたが、小野田と森田の激走で状況が好転し始めた。つなぎの区間を走る選手の組み合わせと起用がピタリとハマったのだ。
7区(11.9km)の中村祐紀(3年)は、大の負けず嫌いである。内に秘めるタイプではなく、気持ちが走りに出るタイプだ。
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