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【月報・青学陸上部】3冠に王手。
接戦だからこそ見えた底知れぬ強さ (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo news

 襷(たすき)を受けた中村の視界には、早稲田大の太田智樹の背中が見えていた。待機所で待っている間、サポート役の田村健に「先行されているけど、最初から突っ込まないようにしないと」と語っていたという。しかし、相手が見えれば当然早く追いつきたいと思う。中村祐は自ら言い聞かせていた禁を破り、太田の背中を猛追した。なんと2kmで11秒も縮め、一時は早稲田大との距離をおよそ100m、約20秒差にまで追い上げた。

 しかし、5kmを過ぎて、中村祐の表情が歪み始めた。暑さと向かい風の影響もあるが、序盤のオーバーペースがたたり、ペースがガクンと落ちたのだ。

「5kmまで突っ込み過ぎた。自重してと思っていたけど、背中が見えて追わないわけにはいかなかった。突っ込んだまま最後まで通せれば、区間賞を取れたと思いますが、弱気になってしまった。結果的にアンカーの一色さん頼みにしてしまい、申し訳ないです」

 中村祐は区間5位。早稲田大との差は49秒に開いていた。

 8区(19.7km)、アンカーの一色恭志(4年)は時計を着けずに襷を受けると、落ち着いた様子で、ひたすら前だけを見て走り出した。

 そこには一色のシンプルな考えがあった。見えなければ見えるところまで追いかけて、追いついたら抜く。そこにペースを計る時計など必要はない。1kmを自分のペースで走る感覚は体に染み付いている。まずは相手を目視できるところまでいくと決めた。もちろん、昨年の悔しさを晴らすためでもある。昨年は1区を走ったが2位に終わり、トップでつなぐ流れを作れなかった。

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