ケンブリッジ飛鳥「10秒切りは
近いうちに。目標はその先にある」 (2ページ目)
「無意識なんですが、ガトリンの背中を目で追ってしまって。自然と顔が上がり、普段より上体が起きるのが早くスピードに乗れなかった。右隣のレーンが空いていたので、余計に左が見えてしまって。ただ、一度経験したので、次からは隣に誰がいても焦ることはないかなと。同じミスはしないんで、いい経験ができたと思います」
気持ちの切り替えは完璧だった。8月18日、400mリレーの予選でアンカーを務め、37秒68のアジア記録を叩き出す。
翌日の決勝、隣のレーンを走るのがボルトに決まっても、怯むどころか心は躍った。
「やったなって。ちょっと自分、持ってるかもしれないって」
決勝、最高の形でバトンはケンブリッジにつながる。トップ集団でバトンを受けると、ボルトにこそちぎられたものの、アメリカ(レース後に失格)の追撃を振り切る。
ボルトが一瞬、ケンブリッジを振り返ったのは既報の通り、互いのバトンがぶつかるアクシデントがあったからだった。
「若干ですけどバランスを崩してしまって。どうにか2番でゴールできたんでよかったんですけど......」
タラレバは承知で、やはり聞いてみたくなる。もしも接触がなかったら、ボルトとの距離は、広がっていたのか? 縮まっていたのか?
「もう少し距離は近かったかもしれません。そういう感覚はありました」
100m準決勝でのガトリン、400mリレー決勝でのボルト。23歳のランナーは、その偉大なふたつの背中を生涯忘れないだろう。
「遠いような、近いような......。もちろん今は距離を感じます。だけど、いずれ追いつきたいなと思いますし、その手応えを感じてもいます」
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