伝説のシューズ職人・三村仁司
「左右のサイズの違いに注目して」 (2ページ目)
「瀬古利彦や宗兄弟の時代にはそこまでやっていなかったのですが、細かくデータを取るようになったのは2000年頃からですね。そのキッカケになったのは、高橋尚子が99年世界選手権で欠場したこと。その原因となった左右の脚の長さの違いをもっと早くわかっていれば、矯正用のシューズを作るなどで故障の発生を防ぐこともできたのでは、と思って......。
最近は以前より測定が細かくなったこともありますが、バランスが悪い選手が多いと感じます。そういうことを選手本人だけではなく、監督やコーチも知っておく必要があります」
選手それぞれ足の形を細かく計測縫製やソールの貼り付けなどはすべて手仕事! 選手によって弱点部分は違うので、どこが弱いのかを指導者や本人が知っていれば、そこを強化することで故障を未然に防止できる。
「今の方が食事面も気をつけているし、合宿も頻繁にあって、練習ができるチャンスはいっぱいある。それなのに日本が弱くなっているのは練習量が足りないからです。指導者も『これ以上やらせたら故障する』といって量を控えてしまいますが、そうならば、故障しないように練習をさせればいいんです」
故障が多くなっている理由のひとつには、クッション性の高いシューズがもてはやされる傾向があり、選手たちもそれに慣れてしまっていることがあるという。三村の子供の頃を考えれば、足袋で走ったり、裸足で走ったりして足が鍛えられ、感覚も鋭くなっていた。だが、今では小学生の運動会でも、ソールが薄いと危険だからといって厚いシューズを履いている子供が多いという。
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