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車いすテニス全仏オープンシングルス準優勝の上地結衣は、パリパラでの金メダルに向けてクレーコート対応を模索中 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

【クレーコートへの対応力】

 ちなみに、2012年のロンドンオリンピックではグラスコートのウインブルドンで大会が行なわれたが、パラリンピックは異なる会場のハードコートで実施された。パラリンピック=ハードコートのイメージがあるが、パリ大会では初めてクレーコートが使用される。クレーコートの質は会場によって異なるが、高く弾み、球足は遅くなると言われる。車いすが横滑りすることもあり、漕ぎだしを含めてチェアワークの強化も必要になるサーフェスだ。

 上地は1回戦では朱珍珍(中国)を6-3、6-0、準々決勝でカタリナ・クルーガー(ドイツ)を6-1、6-1、準決勝でイスカ・グリフェン(オランダ)を6-3、6-2のストレートで下し、決勝に駒を進めた。ここまでは「かなり自分の意図するプレーができた」と上地。

 しかし、決勝のデ フロート戦に対しては、前日に「来るボールの質、ポジション、タイミングもぜんぜん違う」と話していたように、攻めあぐねて自分のペースに持っていけなかった。第1セットは序盤こそリードしたものの、第5ゲームで2度目のブレークを許すとそこから連続でゲームを落とし、第2セットは流れを掴めず、最終的に2-6、0-6と大差をつけられた。

 上地は決勝戦を振り返った。

「今日はサーブもあまりよくなかった。それで先に相手に主導権を握られてしまうと、うしろでひとつ返すのが精いっぱいになり、そこから後手にまわるシーンが中盤から続いた。それを打開するために、ボールのペースや自分のポジションを変えたりしたけれど、連続ではポイントが取れなかった。サーブは喫緊の課題。精度を上げてバリエーションを増やすなどして主導権を握れるパターンを作らないと、彼女(デ フロート)にはプレッシャーを与えられない。ゲームの流れは(車いすを変える前の)昨年のほうが取れていたと思うし、クレーコートの特性に今の車いすがマッチしているかどうか、セッティングも含めてどう変えていくかは改めて考えたい」

 今年の全仏オープンで得た収穫と課題は、上地が女子の頂点に立つための重要なヒントになりそうだ。これからの彼女のさらなる挑戦を見届けたい。

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