別大マラソンで世界新が2つ。視覚障害マラソンで日本の強化策が実る (4ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 この結果から見てもわかるとおり、日本は今、視覚障害者マラソンでは先進国であり、強豪国だ。1984年に日本盲人マラソン協会(現日本ブラインドマラソン協会)が設立され、パラリンピックには1988年のソウル大会から連続して男子マラソンに選手を派遣してきた。男子T11クラスでは1996年アトランタ大会と、2004年アテネ大会で金メダルを獲得。T11と12が統合して実施されるようになった2008年北京大会以降は入賞に留まったが、16年リオ大会の男子で岡村正広(RUNWEB)が銅メダル、初めて実施された女子でも道下が銀メダルを獲得し、再び存在感を示した。

 こうした実績を支えるのは、JBMAによる地道で綿密な強化策だ。伴走者の存在なくしては一歩も走れない選手も多いなかで、伴走者を含めた「チーム・ジャパン」としての強化を続けてきたことが今につながっている。市民ランナーの練習会なども主宰し、指導法に定評がある安田理事を中心に、男子の強化指定選手を対象にした合宿を早くから定期的に開催。女子についても、2013年春に強化選手制度を立ち上げ、リオ大会での活躍につなげた。

 強化選手の居住地は北海道から九州まで各地に散らばっているが、ここ数年はほぼ毎月、3日から4日間の強化合宿を行なう。仲間たちと直接情報交換し、切磋琢磨しあえる環境でアスリートとしての覚悟を持ち、いい意味でのライバル意識も生まれているのは間違いない。

 このほか、科学や医学的な知見も積極的に活用し、合宿時には血液や唾液の検査などによって各選手の健康状態を把握したり、栄養指導による体作りやヨガも取り入れている。アンチドーピングやトレーニング理論などの座学の時間もあり、強化は多岐にわたる。

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