退路を断って成長。パラテコンドー・伊藤力が東京パラ初代王者を狙う (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • photo by Murakami Shogo

「ヨガやジム、上半身を鍛えるためのボルダリングなどのトレーニングに加えて身体を作っていますが、やはり大事なのは日々の稽古。やればやるほど強くなれる世界だし、障がいの有無に関係なく一緒に戦っていけるという感覚も、やる気につながっています」

 パラテコンドーと出会ったのは、30歳の時。アンプティサッカーの関係者から、パラテコンドー界が選手を探していることを聞いた。

「当時はとくに競技者としてパラを目指すということも考えていませんでした。ただ、せっかく声をかけてもらったので、自分でもやれるならやってみようという感じでした」と伊藤は当時を振り返る。

 ところが、そこから自身を取り巻く環境は、本人も驚くスピードで変化していく。

 シドニーオリンピック銅メダリストで全日本テコンドー協会の岡本依子さんにツイッターで連絡を取ったところ、すぐに返信があり、誘われるまま強化合宿に参加することに。

「何がなんだかわからなかったけど、ミットに足蹴りした時の、パンッて決まる音とかは気持ちよかったです。岡本さんには、競技を始めるために環境のよい東京においで、と声をかけてもらいました。当時は北海道に住んでいて、小さな子どももいたので、すぐ心が決まるところまではいかなかったんです」

 未来に迷いを抱いていた伊藤。だがある出来事が、その心に火をつけた。

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